

6日、月曜日。7時起床。しばらくグズグズしてから、本日はゆっくりと始動。少しのオフ気分と言っても、やることは別に変わるわけでもなく、ネットで映画館情報を調べてから、フランス映画の封切り作品を見に街へ。
道中、情報誌の「Pariscope」(=フランス版「ぴあ」というか、元ぴあというかの週刊誌で、こちらは相変わらず健在。料金は依然として驚愕の40円程度)を買って上映中作品の詳細を見てみると、去年の東京国際映画祭でも紹介した『ガザを飛ぶブタ』とか『アナザー・ハッピー・デイ』とか『デタッチメント』などが順調に公開されているようで、嬉しくなる。
日本に関して言えば、僕が把握している限り、『アナザー・ハッピー・デイ』はチャンスがあるかもしれないけれど、ガザとデタッチメントは公開の情報がなく、んー、なんとも無念。なんとかならないものか…。
地下鉄に乗って、レ・アールに向かい、UGCのシネコンで9時20分から『Parlez-moi de vous(直訳は:あなたの話を聞かせてください)』というフランス映画。主演はキャリン・ヴィアール。ラジオの人生相談番組のパーソナリティーで人気を博している女性が、幼いときに捨てられた母親を探す物語。平板な設定の反動からなのか、主役の女性をエキセントリックな性格で描きすぎたのが完全に裏目に出てしまった失敗作。
続いて、同じレ・アールの中にある別の映画館に場所を移し、11時45分から『Et si on vivait tous ensemble?(直訳:みんなで一緒に住んだらどうだろう?)』というフランスとドイツの合作映画。老い先の悩みを抱える老人たちが共同生活を始めるヒューマン・コメディー・ドラマ。メインの3人のフランス人のオジサマたちはいいとして、脇を支えるのがダニエル・ブリュール、ジェラルディン・チャップリン、そしてなんとジェーン・フォンダという、トンデモなキャスティングにびっくり。
サンドイッチをかじりながら、またシネコンに戻り、ジュリエット・ビノシュ主演の『Elles(直訳:彼女たち)』。ポーランドとドイツとフランスの合作で、監督はポーランド人なのかな。舞台はパリで、見た目はフランス映画。ジャーナリストのビノシュが、売春をする女子学生の取材をしつつ、自身の家庭の問題でもあくせくする物語。んー、特にコメントなし。
そして、16時55分から、東南アジアの森の中で白人コンプレックスがねじれた形で露呈し、西欧的な絶望と退廃と虚無と自虐が支配する、全くもって理解不能なシャンタル・アッケルマン監督新作の『La folie Almayer』を観て、疲労困憊。あとから、ジョゼフ・コンラッドの原作をゆるやかにモチーフにしていると知って、「なるへそねー」と思うものの、僕はもうちょっと勘弁して下さいという感じ。
やれやれ、とため息をついて外に出て、サン・ミッシェル界隈を少しぶらついてから、かれこれ15年来の映画的同志であるパリ在住のT君と食事すべく、マビヨンのレオンへ(レオンはベルギー料理のチェーン店で、チェーンとは言えども、僕はバケツ一杯のムール貝とフライドポテトの組み合わせが、無条件降伏的に好きなのでした)。
映画の画面を見ながらも無意識的に「見ていないもの」とは何か、アッケルマンの新作は「ショットの映画」だが、それを許していいのか悪いのか、ハスミシゲヒコ的言説の功罪の2012年的分析、『最強のふたり』を東京のコンペに選んだ意味(あるいは意義)の考察、等々、シネフィル的なのかどうなのかよく分からないけれど、ひたすら愉快な与太話を展開し、幸せな夜はあっという間に過ぎていき…。
映画祭プログラミングD
矢田部吉彦
1966年、仏・パリ生まれ。小学生時代を欧州、中学から大学までを日本で過ごす。大学卒業後、大手銀行に就職。在職中に留学と駐在でフランス・イギリスに渡り、その間年間300本以上の映画を鑑賞し続け、帰国後、海外から日本に映画を紹介する仕事への転職に踏み切る。以後、映画の配給と宣伝を手がける一方で、ドキュメンタリー映画のプロデュースや、フランス映画祭の業務に関わるように。2002年から東京国際映画祭へスタッフ入りし、2004年から現在まで上映作品の選定を行う作品部の統括を担当。2007年よりコンペティションのディレクターに就任。
なんとまあ!ガザもデタッチメントもすばらしかったのに非常に残念です!私は一昨年のブッダマウンテンもなんとか公開しないかなあ…と思っています。東京国際映画祭、本当に毎年楽しみにしています!出張おきをつけて!