

20日、日曜日。終日、強めの冷たい雨。これはひどい。開幕から今日までのカンヌの天気は、間違いなく過去数年で最悪ですね。ヒートテックを身に着けていたという同僚はちょっと大げさとしても(ごめん)、いやあ、寒い。みんな、風邪をひかなければいいけど…。
本日は、8時半からミヒャエル・ハネケ監督の新作『Love』からスタート。公式上映のチケットを持っていたのだけれど、8時に会場に行ったらすでに満席と言われ、9時からの追加上映に回されてしまった。チケット持っているのに? カンヌの入場システムは毎年微妙に異なるので、なかなか慣れるということがない…。
『Love』は日本公開も予定されているので、あまり詳しくは書かないけれど、「老老介護」を通じて老夫婦の愛の形を描く内容。ハネケ特有の毒気は、今回は少し薄まっており、かなりストレートな作品。しかしクオリティーの高さは、さすがの一言。
さて、今日から、本格的に各映画会社とのミーティングがスタート。カンヌでのミーティングは、10月開催の東京国際映画祭に、いかに新鮮でクオリティーの高い作品を招待できるかを左右する極めて大事な場なので、ここ数日の鑑賞モードから頭を切り替え、気合いを入れて臨まなければいけない! ともかく、上映を観ているとミーティングをしなければと焦り、ミーティングをしていると観られない上映が気になって焦る、というジレンマに苛まされるのがカンヌのつらいところであります。
というわけで、12時から比較的大きめな会社と2件連続でミーティング。14時から、上映に戻り、「監督週間」のフランス映画へ。期待が大きかったのだけれど、直前に軽く昼食を食べたからか、抗いようのない眠気に襲われてしまい、落ちてしまった…。まあ、長丁場のカンヌ、こういうこともあるさ…、と言い訳(誰に?)。
続いて、ミーティングが3件。3件目のミーティングを終えると、入口に置いていた傘が消えている。くそー、やられた。しょうがないので、宿に戻って出張前に買ったウィンドブレーカーを着込み、フードを被って雨の街へ再繰り出し。
19時15分から、「監督週間」部門の『Clandestine Childhood』というアルゼンチン映画。70年代の軍独裁政権下において、地下抵抗ゲリラ活動の集団を率いる一家の物語を、少年の視点から語る作品。まっとうな出来ながら、いささか新鮮味と作家性を欠いており、まずまずといったところかな。
21時過ぎに終わり、次の22時の「批評家週間」の作品を観るべく会場を移動すると、一段と雨脚が強くなっている…。雨の中、傘なしウィンドブレーカーのままで震えながら、ここまでして観る必要があるのか? という思いを懸命に頭から払拭しつつ、列に並んで待つこと小一時間。
開場が30分以上押し、ようやく席に座れて観たのは、『Beyond the wall』というベルギー・カナダ・フランスの合作映画。男性のゲイのカップルの悲恋物語。同性愛映画はベルリン映画祭の得意分野で、カンヌではちょっと珍しい(そうでもないか。まあ、でもベルリンが圧倒的に多いのは事実)。
出会いの興奮に満ちた幸せな展開から、不幸なすれ違いを経て、哀しい結末へと至る本作の物語は、男女の恋愛に置き換えたら結構ありがちな内容だよなあ、と冷めた思いを抱きそうになりつつ、ゲイを扱っているから特異な展開がなければいけないと思ってしまうのも偏見だよな、とたしなめる思いもあり、いや、なかなか同性愛映画も難しい。というコメントも偏見か?とループ状態。とにかく、きちんとした映画ではありました。
0時過ぎに凍えながら宿に帰り、本日は終了。全知全能の神に、風邪をひきませんように!と祈りながら、今日は久しぶりに1時台に就寝(予定)!
映画祭プログラミングD
矢田部吉彦
1966年、仏・パリ生まれ。小学生時代を欧州、中学から大学までを日本で過ごす。大学卒業後、大手銀行に就職。在職中に留学と駐在でフランス・イギリスに渡り、その間年間300本以上の映画を鑑賞し続け、帰国後、海外から日本に映画を紹介する仕事への転職に踏み切る。以後、映画の配給と宣伝を手がける一方で、ドキュメンタリー映画のプロデュースや、フランス映画祭の業務に関わるように。2002年から東京国際映画祭へスタッフ入りし、2004年から現在まで上映作品の選定を行う作品部の統括を担当。2007年よりコンペティションのディレクターに就任。