「ヤバい経済学」を解説付きで紹介してもらいました

映画「ヤバい経済学」はまだまだ全国で上映しております。
是非、足をお運びくださいませ!

経済学部の学生さんやこれから経済を学ぶ人も必見!

ヤバい経済学がmonexTV(サイト)で紹介してもらいました。
宿輪純一さんの解説付きです。
宿輪さんは本が出た当初から「ヤバい経済学」に興味を持たれていたようで、今回も映画について熱く語ってくれました!
http://www.monex.tv/movies/view/134

ニコニコ生放送レポート 最終回(全4回)

<最終回>『結局、インセンティブって有効なの?』
―インセンティブがわかれば人の行動がわかる、しかし、インセンティブが効かない場合もある!結局のところ、インセンティブって人を動かすためには有効なのでしょうか?


飯田:電力の場合もそうなんですけど、金銭的インセンティブをあげてもうまくいくこともあるし、うまくいかないこともある。映画の中でも言っている金銭的インセンティブというのは"外発的動機"っていうんですけど、"外発的動機"と"内発的動機"について説明していただけませんか?
友野:経済学ではほとんど出てこないんですけど、心理学者は良く使います。社会的動機付けというのは文字通り外からの動機付けなんですけど例えばお金で人を動かすとか、地位とか名誉とか外からくるもので人が動くというのが外発的動機付けです。内発的動機付けというのはそのこと自体が面白い、或いはそうやることが義務だから、自分の仕事だからってやるのも内発的動機付けです。
飯田:さっきの託児所の例なんかもそうだと思うんですけど、外発的動機付けをつけると内発的動機付けがなくなってしまうことがあると、けっこう教育学、教育社会学、教育心理学の分野でよく言われてることでもあるんです。僕なんかほっといてもブログ、ガンガン書いてたんです。でも原稿料が発生すると「仕事かよ~」って感じになってしまうことってありませんか?
田中:学生の就職指導なんかもボランティア的にやると丁寧にやるんですけど、業務になると非常にダウンしちゃうんですよね。これ、よく言われてますよね?ロバート・ルーカスも言っていたんですけど、芸術家は内発的動機が中心で金銭に置き換わっちゃうといきなり作品が下がっちゃう。これ、美大生で検証しても起こったらしいですよ。それで聞きたかったんですけど、キャッシュフォーワークって半分ボランティアで半分お金もらえる制度ってあるじゃないですか。あれでボランティア精神は棄損しませんかね?
飯田:CFW側になっちゃって、ちょっと言わせていただくと、ボランティア活動に対してもお金を払っていくっていう一つの理由としてはずっとボランティアに継続的に入れる人っていないんですよ。よっぽど暇で金持ってる人じゃないと、東北地方に行って数ヶ月、どんなに短くても一週間、二週間仕事をしないでボランティアに入れる人ってなかなかいない。そういう人にせめて宿泊費、食費、または家賃くらいは払ってあげようというのがハーフボランティアとして捉えるときのポイントなんですね。その中で、映画本作はインセンティブによって人々の行動ができる場合とできない場合というのが出てくるわけですよね。その中で、どういうときに合理的で、どういうときに金銭的インセンティブが活きてきて、合理的になるのか、或いは合理的じゃなくなる傾向があるのでしょうか。
友野:今のインセンティブの話で言うと、お金のインセンティブが有効な領域とそうとは限らない領域があるということです。お金のインセンティブで一番有効なのは匿名的な市場での取引でしょうね。高いから買わなくなる、安いからより買おうとするっていうこともお金のインセンティブです。特定の人から買うというよりも売り手も買い手もお互いに知らないで買うから金銭のやりとりでいいと思うんですけど。先ほどのイスラエルの幼稚園の例もありましたけど、人が絡むとき、預けるお母さんと幼稚園の先生との人間関係があります。社会性とか。そこにやたらにお金のインセンティブを持ち込むとダメになっちゃうわけです。友達関係なんかでも、例えば友達が家に招いてくれてご馳走してくれたから帰りに「はい、美味しかったから2千円」なんて渡したら二度とその人は招待なんかしてくれないでしょうね。そういうふうに人間関係のところにお金を持ち込むと破壊的な気がします。
安田:「市場」という言葉が出てきたんですけど、市場の持っている隠された機能の一つが市場取引を通じると差別が減るかもしれない、と。どういうことかというと、例えばアメリカでは黒人差別というのが未だに大きい問題としてある。ここで労働市場を通じて人を雇って、出来るだけ利潤を稼ぎたいという世の中になった場合に、優秀だけれども黒人だから雇わないとなったら結局損をしてしまう。匿名性が高くなって金銭的な動機で動くようになると差別の問題が緩和されるかもそれない。金銭的インセンティブって聞くとドライで殺伐としたよろしくない状況が実現しそうな気がするんですけど、場合によっては市場がむしろ歪みを正す側面もある。もう一個、友野さんのお話で補足すると映画のオリジナルストーリーで高校生に対して実験をするんですけど、そこのメンバーの一人でレヴィットと同じシカゴ大学のジョン・リストさんっていう人がいるんですね。彼のやった研究で野球カードのトレードゲームっていうのがあって、普段野球カードを売っている人に実験室の中で学生に対してカードを売ってくださいっていうと、価値のないカードを高く売るというイカサマ行為が減るんです。インセンティブに従って人は動いてないんじゃないかって思ってたんですけど、実際の市場ではガンガンイカサマしてる。市場的で匿名性の高い環境になればより金銭的インセンティブが効いてくるんじゃないかと。いくつか証拠も挙がってますね。
飯田:ある意味、知り合い同士、友達同士だと金銭以外のインセンティブが働くけど、匿名だと働くインセンティブが金銭しかなくなっちゃうってことなんですかね。
田中:僕が最近経験した非合理的なネタなんですけど、「AKB経済学」っていう本書いたお陰でテレビ局とか新聞社とか取材にきたわけですよね。総選挙の関係で。みんなうらやましがると思うんですけど、僕、高橋みなみさんとか指原莉乃さんとかと一緒に仕事したことあるのね。非常にとてもいい子なんですね。
飯田:自慢トークですか(笑)
田中:それで、その話をしだすと、AKBの総選挙の話をしなくちゃいけないのに高橋みなみの話で1時間喋っちゃうんだよね。結局そのコメントは不採用とかね。これは一体、合理的なのか非合理的なのか・・・。
飯田:なんだ、その話で来週また江口愛実と仕事とか言うのかと。
田中:CG出すなよ(笑)
飯田:さて、名前についての話ですが、面白い話っていうのはたくさんあるんですよ。昔、"子"の付く子は頭がいいというのがありましたけど。日本以外でも名付けの本ってけっこう出てるらしいんですよね。
田中:外国のことは「ヤバい経済学」を見れば面白いことがあるんですけど、日本でも名前によって社会階層の違いとかあると思うんですけどね。今だと"子"のつく名前って多くないですよね。私立の小学校とか幼稚園の名簿を見たことがあるんですけど、私立の子達は"子"が付く名前が多い。そういったところ見ると私立行く子はある程度所得水準が高い家が多いわけですからね。あとは東大に入る男の子と女の子の名前を調べてみるとかね。
飯田:それけっこうあるかもしれないですね。あんまりスゴイ名前ってみたことがないかも。どうですか?
友野:東大?東電って聞こえたんですけど・・・(一同笑)
飯田:それは電子ちゃんです(笑)アニメのキャラ名を子供に付けてしまう親って実際にいるはいるみたいなんですけど。その子達がどうなるか、ですよね。名前についてはポイントがあって変な名前だから変な親なのか、変な名前だから何か悪いことがあるのか。親も変なら子供も変、とか。たまたまその家庭では名前も変なのか。変な名前付けられちゃったことによってその子の人生に影響が出てしまったのか。これ、どっちなんだろう?ちゃんと調べなきゃわかんないだろうと思うんですけど、どうですかね?
田中:断定的にはいえないんだけど、さっきから考えているのは、なぜ、イカ娘なんだ?ってことですかね(一同笑)
飯田:では、オチもつけてもらったところで討論会は終了します。
------------------------------------------------------------
※皆さん、ありがとうございました!
左から友野さん、田中さん、安田さん、飯田さん

4shot.JPG

ニコニコ生放送レポート 第3回(全4回)

<第3回>『節電に効くインセンティブとは?』

―この夏、一番の課題でもある"節電"。経済学を応用して有効的に節電をするにはどうしたらいいのでしょうか?


飯田:よくインセンティブでコントロールできるんじゃないかった言われているのは電力消費を抑える方法。一番簡単な解決策が15%削減できなかったら100万円の罰金っていうのがあるんですけど。事業によっては「いいよ、100万円払っちゃえば」っていうところが出てくると思うんですけど。
田中:レヴィットの本にも書いてあったんですけど。ベーグルを会社に置いておいて、お店の人は誰もいないんですけど、ベーグルを持っていくときは代金を置いておけ、というと意外とみんな守るんですよ。それは社会的インセンティブ、衆人観衆とか、道徳的インセンティブ、盗みをしたら罰せられるとか、そういうものが効いているんじゃないかと。それを逆に"ベーグルを盗んだら罰金をいくらか科す"ってやっちゃうと、社会的インセンティブや道徳的インセンティブが金銭的インセンティブにすりかわってしまって、社会的道徳的インセンティブが崩れ去ってしまうということを書いてました。
安田:それに関連して金銭的インセンティブがどれだけ効くか、或いは社会的道徳的インセンティブとスイッチしてしまうのかという話で面白い論文があります。イスラエルの保育園で親が子供を決められた時間までに迎えに来なければならない、というルールがあって、遅れたら怒られるとかだたったんですけど、あるとき罰金制にするんですよ。何分遅れたらいくら払いなさい、と。金銭的インセンティブが効くのであれば今までは遅れても罰金がなかったのに、罰金があれば当然、時間通りに迎えに来る親が増えて違反が減るだろうと思ったら、逆に違反が増えた。書き手の主張としては罰金を導入することによって考え方が変わるんです。お金さえ払えば遅れてもいいんだ、と。例えば罰金が1000万とかだったらそりゃ誰も遅れないと思うんですけど、実際に科した数百円とか高くても数千円だったわけです。それぐらいの罰金だとむしろ人々の考え方が変わってしまってうまく思い通りの効果をもたらさないかもしれない。
飯田:例えば消費電力15%削減できないと企業が睨まれる、怒られるってこともあるかもしれませんけど、自発的に削減してもらうにはどうしたらいいでしょうか。
友野:やっぱり一番いいのは使う時間帯によって金額を変える。
飯田:お昼だけが高いとか?
友野:そうです。ピーク時は高くして平準化する。どこも行動経済学じゃないんですけど(笑)ひとつだけあるとすると、どのくらい電力を使ってるかわかるようにする。一軒一軒ずつわかるようにするとそれを見ただけで多いかなぁって思うし、或いは去年よりも多いとかわかればそれだけでも多少効果があると思うんです。
飯田:ダイエットに一番効果的なのは1日3回体重計に乗ることっていう話ですよね。特に何かしてるわけではなくても気をつけるようになる。
友野:レコーディングダイエットがありまして、記録をつけるだけで効果がある。
田中:僕ね、「レコーディング就職術」って本書いてますよ。
飯田:突然、宣伝ですね(笑)でも、それに加えて社会的な罰則を加えるなら、表札の下に消費電力を表示させるとかね。そうしたらご近所の目があって絶対みんな節電すると思うんですよ。僕、こんな節電の話ばっかりしてるんですけど、けっこう電気消し忘れるんですよ。そういうのが全部表札の下にでちゃったら怖くて、電気ちゃんと消すようになりますよね。
安田:テーマとしてはどうやって電力を減らすか、どうやって節電をするかって話にウェイトがかかってると思うんですけど、本来は本当に電力削減が目的ではなくて、より有効に電力を使ってくれる人、例えば生産性が高くて電気がないと生産ができないところに使って欲しいとか、或いはどうしても必要な電気はやっぱり使って欲しいわけですよね。当初やった計画停電みたいに地区毎にバッサリ電気を流さないとなると全くそのニーズを反映していない節電の仕方になってるわけですよね。
飯田:計画停電のとき一番問題だったのが、命っていう意味では医療施設だし、全員に影響が及ぶって意味では交通。これを止めてまで計画停電する意味があったんですか?っていうのはけっこう大きいと思うんですよ。
田中:駅でもエレベーター、エスカレーターが止まると健康な人はいいんですけど、体に障害を抱えてる人には困る。けっこう多いんですよ。僕もちょっと血圧高めなので、階段ふぅふぅ言いながら上ってますよね。
飯田:それ比喩的な意味じゃなくて、ですか?
田中:本当です。ネットでいじめられすぎちゃってね(笑)
飯田:もう一つは電気の供給が増えれば切り詰めなくてもいいわけですよね?例えば供給を増やすためのインセンティブ付けもできるでしょう、と。ちょっと話を戻してしまうんですけど、家庭用の電気で言えば、電気料金を上げればいいじゃないか、っていう話が出るんですけど、産業部門、お店とか工場は電気料金をあげると効果覿面なんですけど、家庭って意外と料金で動いてくれないっていう指摘がけっこう多いんですけど。あんまり合理的じゃないってことになるんでしょうか。
友野:合理・非合理というより普通の経済学でいう、弾力性の問題じゃないでしょうか。

ニコニコ生放送レポート 第2回(全4回)

<第2回>『大相撲の八百長は経済学的にはなくならない!?』
―映画『ヤバい経済学』でも描かれている"大相撲の八百長"について、経済学から見た八百長とは?また、八百長をなくすことができるのでしょうか...?


飯田:大相撲の八百長問題でちょっとだけ残念な話になるんですけど、この映画が撮られた後に物的証拠が出てきて八百長が裏付けられたんですよね。今の時期に撮ってたら確信を持って「ありました!」って言えるわけで、もっと面白くなってたかもしれないですね。『ヤバい経済学』の八百長の取り扱い方ってこういったデータを見ることで、日本の大相撲の中では何千年に1回しか起きないことが毎場所起きてしまっているってことです。八百長問題って前からいろんなところでささやかれていたんですけど、実は鳩山元首相も八百長の論文を書いていたとか・・・
安田:僕も論文を読んだわけではないんですけど、鳩山元首相が専門の学術論文で大相撲のデータを見ていくうちに7勝7敗で千秋楽を迎えた力士の勝率がものすごく高くなっていることに気づいたんです。その気づきはレヴィットと一緒なんですけど、そこから統計的な手法を使ったりとか細かい分析をしないで、単に彼は"追い込まれた力士は火事場の馬鹿力が出る"って日本的な考えでまとめてるって聞きました。
飯田:実は気づいてるんだけど、答えは出せないっていうのが性格と政権力に出てるんじゃないかなって思っちゃいますね。映画の中で取り扱われているのは大相撲が高い確率で八百長があるという証明なんですね。一歩進んで、八百長をなくすためにはどのようにすればいいとお考えしょうか。
田中:ひとつは取り組み自体をあしらうこと。7勝7敗同士で千秋楽をあてるとか、三勝がかかってる人と勝ち越しがかかってる人をあてるとか。もうひとつは社会的監視を強める。通常の解説者ではなく、「あれはどうなんだ」って厳しく突っ込む人にやってもらうとか。或いはニコ動みたいにみんなでNHKの画面に「これはおかしい」とか流してみるとか。八百長問題で調べたことがあって、八百長告発した2人が同じ病院で同じくらいの時間に死んでしまったという話があるんですよ。
飯田:映画の中でも「永遠の謎です」って描かれてますね。
田中:実はこの二人、非常に仲が良くて、亡くなる前の日も一緒にゴルフに行ってお風呂入ってるんですね。またその10日前くらいには一緒にソープランドに行ってるんです。その時はビンビンに元気なんですけど、その10日後に肺炎で死んでしまうんです。レジオネラ肺炎っていって滅多に起こらないけど、集団感染しやすい。八百長を記者会見で言うはずだった二人が同じ病院でほとんど同じ時間に死んでしまうわけですけど、実際には仲良く一緒にお風呂入ったり、エッチしちゃったりして、温泉のお湯で感染しちゃってるんです。しかも二人とも糖尿病なんです。それで合併症を併発して死んじゃったんです。
飯田:映画では謀殺説になってるけど、実際にはそじゃないかもよ、と。
田中:そうなんですよ。このことは翻訳者の望月さんを通して5年前にはレヴィットに伝えてるんですよ。全然映画に反映されてない(笑)
安田:大丈夫ですか?大相撲協会から不透明な資金が田中さんのところにいってるんじゃないですか?(笑)そもそもなぜ八百長が起こるのかじっくり考えてみたいと思うんですけど・・・。元々、勝負なのでどちらかが勝ってどちらかが負けるわけですよね。そこだけ見ると損得が釣り合っているんで、わざと負ける要素がないんですけど、問題なのは同じ一勝の価値が全然違うということ。一人は7勝7敗で勝ち越しがかかってる、とか優勝がかかった大一番とか。非常にその一勝に価値が高いことがある。片方の力士は確かにそこで負けるのはマイナスなんですけど、そこまでマイナス分が大きくない。そうすると口裏合わせるとか或いはちょっと手を抜いてより価値の高い人に勝たせる、と。そのリターンは場合によっては金銭かもしれないし、今度似た様な状況で負けてくれるかもしれない。一勝の価値にバラつきがあると、ズルをしたり、とインセンティブが出てきちゃうんです。解決するためにはバラつきをより平準化する。ただ難しいのは勝ち越しか負け越しかっていうのは非常に明確な基準ですよね。それを元に昇格、降格が決まるっていうのは、見てるファンからしてもわかりやすい。ところが、ルールを複雑にしてこの力士は1年間やって何勝以上だったら昇格するとか、或いは誰と誰の対戦成績がよかったらあがる、とか。そうすると見ているほうはエキサイティングしなくなるかもしれない。単純なルールというのは大相撲を楽しむ側からするとメリットはあるのかもしれないけど、あまり単純にしすぎるとインセンティブ構造が歪んで不正が出てくるかもしれない。このバランスを考えなければならない。
飯田:サッカーでも(優勝決定する要素が)各試合関係なく、シーズンの得失点差だけだったら一試合一試合見てるのがつまんなくなっちゃうかもしれない。
安田:そうですよね。
田中:あとはオールスターみたいに一番勝ってる人間じゃなくて一番目立ってる人間に賞金を与えちゃったりね。後は皆、平等に参加費だけあげるとか。そうしたら八百長がなくなるね。
安田:相撲の世界じゃなくて経済の世界でも行われていることなんですけど、八百長を防ぐ方法として、チクった人は罰則を軽くする。これ実際、やろうとしてましたよね、大相撲協会も。
飯田:比較的損得で決まっているので、それをうまくコントロールする話が中心ですけど。大相撲の話は国民的な問題になってしまいましたけど。友野さんは八百長をなくすためにどうしたらいいと思いますか?
友野:行動経済学的に考えようとしたんですけど、ロクな答えが見つからない(笑)どこが経済学や、って言われそうですけど、厳罰化くらいしか思いつきません。いっそのこと、八百長オッケーにしちゃたらどうですか?完全なショーにしてしまう。昔のプロレスはショーだって言われてましたよね。筋書きもあって。でも、技は繰り出して面白い。大相撲もそうしちゃう。ダメ?
田中:花相撲ってあるじゃないですか?わざと勝ち負けを八百長が一般的に行われているのだとしたら、今までの花相撲のレベルが低すぎたんですよ。本当の八百長は高度な花相撲ですよね。そっちは素人にはわからない。花相撲は巡業とかで見てればわかるんですよ。
飯田:実は「花相撲」って単語、今知ったんですけど。すみません(笑)
----------------------------------------------------------------
経済界の歴史に残る!?田中秀臣氏と安田洋祐氏のツーショット!
tanaka_yasuda.JPG

ニコニコ生放送レポート 第1回(全4回)

6月17日(金)
【ニコニコシアター】映画「ヤバい経済学」ロードショー(有料)&無料討論会「あなたの選択、間違ってます!?」


【司会】
飯田泰之((エコノミスト・駒澤大学准教授)
【出演】 
田中秀臣(エコノミスト・上武大学ビジネス情報学部教授)
安田洋祐(エコノミスト・政策研究大学院大学教授)
友野典男(エコノミスト・明治大学情報コミュニケーション学部教授)


―映画『ヤバい経済学』をニコニコ生放送で有料上映の前に、日本の経済界を支える経済学者4名に集まって頂き討論会を行いました。白熱した討論会を全4回に渡ってレポート致します!司会はニコ生シノドスでもお馴染み、飯田泰之さん、ゲストに「不謹慎な経済学」「AKBの経済学」の著者・田中秀臣さん、ニコニコ生放送初登場の安田洋祐さん、行動経済学ブームの火付け役の一人でもある友野典男さんをお招きしました。『ヤバい経済学』は行動経済学だと思っている人が多いらしいのですが、実は行動経済学とは対極にある本なのです。行動経済学と反行動経済学との違いについても詳しく解説して頂きました。これを読んで映画を観れば、経済学がまるわかり!

<ニコニコ生トーク 第1回>『インセンティブって何?』

飯田:まずは映画の感想からお願いします。
田中:面白かったです。僕は試写会で経済学者の原田泰さんと見に行きました。大相撲の八百長のところが非常に興味ありましたね。原作ではさらりと触れられているところなんですけど、割と深く追究されています。監督もアカデミー賞受賞監督なので重厚感がありました。
安田:この本自体は、英語版もベストセラーでした。レヴィットは単純にエコノミストとして売れっ子というだけではなくて、学術的にも研究業績があって若手のノーベル賞と呼ばれるジョン・ベイツ・クラーク賞も受賞しているスーパースターなんです。一番驚いたのは映画でレヴィット自身が解説者として登場するんですけど、映画の中ではちょっと小洒落た感じになって話も饒舌になってるんです。レヴィット自身の変化に驚きました(笑)あと内容的なことを言えば、基本的には原作の内容のままなんですけど、本には載っていないエピソードが最後にあって、それが面白かったです。
飯田:そうなんですよね。最後のパートが一番デカい企画になっているので、是非、原作読まれた方も観ていただければと思います。
友野:この本自体は標準的経済学です。単純に言うと"人間はお金で動くよ"と。これが単純じゃなくてもっと色んなのがあるんだよっていうのが行動経済学です。
飯田:単純に「お金をあげるよ」と言っても行動が変わらないって人がいるっていうのが面白いところなんですよね。経済的な問題を考えるひとつのヒントになってくると思います。さて、『ヤバい経済学』の中で非常に重要になってくるのが"インセンティブ"です。日本だと営業マンの歩合みたいなものをインセンティブと呼んでしまっているので狭い意味に捉えられているんじゃないかな、と思ってますが・・・
安田:直訳すると"動機付け"。どういうことをインセンティブっていう言葉で表現したいかっていうと個々の人がその行動を決める分析をするとき、なんらかの形でその人自身が得する選択肢を選ぶと。ポイントになってくるのは個々人で決められる。そういった意思決定の仕組み自体をインセンティブという。必ずしもお金ではなく、例えば今もニコ生で僕らにも随時コメントが見れているんですが、まずいコメントが流れると出演料から千円引かれるとかないんですけど、精神的ダメージがあるから頑張ろうって思うことだったり。広い意味でインセンティブを捉えるべきなんですけど、実際にはお金が一番わかりやすいインセンティブの与え方なんですよね。
田中:最近の例でいうとAKBの総選挙ですよね。彼女達は頑張ってますよね。実は公表はされていないんですけど、彼女達の所得はそんなに多くないんですよ。あくまで雑誌の情報ですけど、トップの子でも年収2000万くらい。でも働いてる時間を考えたら時間あたりの所得って低いと思うんですよ。ほとんど24時間戦うって感じでやってますからね。そう思うと彼女達は金銭的インセンティブで頑張ってるわけじゃないんです。レヴィットの本では3つのインセンティブを強調してるんです。金銭的インセンティブ、社会的インセンティブ、道徳的インセンティブ。恐らく彼女達は社会的インセンティブ、つまりアイドルとして見てほしいとか名声的価値で動機付けられて頑張ってるんじゃないかなと思います。
飯田:インセンティブって金銭的じゃないにしろ、何かの損得があると合理的に用いて判断を行っているという考え方ですよね。その一方で行動経済学はそこまで合理的じゃないんじゃないかっていうのがテーマになるんですよね。
友野:心理学で言うと内発的動機付け、つまり面白いからやる、義務だからやる、というのも広い意味ではインセンティブ。それに従って行動するというのも合理的と言ったらみんな合理的なんですよね。
飯田:主流派の経済学がズルいのは、何でもインセンティブにして主流派の経済学で回収できる、うまい仕組みなんですよね。

【劇場トークショーご報告】ジャーナリスト・上杉隆さん

6月19日(日)にシアターN渋谷で
【『ヤバい経済学』から日本の経済を斬る!】と題して
ダブナー氏と同じニューヨークタイムスでも働いた経験のある上杉隆さんが
「むしろヤバいのは、八百長よりも日本のマスコミでは?」と思うような
八百長問題を切り口に日本の報道問題についてとことん語りました。
自虐ネタも満載のトークの全貌を紹介します!

-------------------------------------------------
僕とダブナーとの共通点は前に「ニューヨークタイムス」で働いていたことです。でも、はっきり言って彼がいつ働いてたのか全然知りません。もちろん彼も僕を知らないでしょうけど。『ヤバい経済学』はニューヨークタイムスと似た価値観でやっていってますね。
 ジャーナリストの武田さんが映画の取材を受けたことは聞いてたんですよ。当時、日本で武田さんが干され始めた頃でしたね(笑)日本でジャーナリストが干されると海外メディアの取材が多くなるんです。私も3月の東京電力会見以降、放射能問題で干され出したら世界中から取材が来ました。日本の地上波は出るとモザイクかかっちゃうんですけど、アルジャジーラ、CNN、BBCにはちゃんと顔写真付きで出てますよ。
 武田さんが週刊現代で相撲の取材をやっているときに私のラジオ番組にも出てもらってたんです。ところが八百長問題、力士の死亡事件を扱ってから武田さんが干され始めたんですよね。だからなるべく出てもらえる番組には協力してもらってたんですけど、とうとう武田さんが訴えられたときには"訴えられたらそれはマズイ"っていう変な日本の文化があって武田さんが地上波から出入り禁止をくらうんですね。それでも番組に出てもらおうと説得したら、出演の前日になってディレクターが番組が降りてしまったんです。番組に出演するたび誰かを犠牲にする、という非常に厳しい状況にありました。結果として今は、武田さんの取材が正しかったと証明されたわけですから逆転訴訟するのかな。そんな感じで日本の報道っていうのは時代の空気とか流れによってどうにでも変わる、という。テレビ、新聞が報道していることが結果として180度違ったということが数年経つとわかるんですね。今、起こってる放射能問題っていうのが今報道されていることと違うってことに数年経ったら気づくのかな。気づいたときには手遅れになってますけど。大変残念でした・・・って夢も希望ないな。
 イタリアのあるスポーツ新聞が日韓ワールドカップサッカーの直前にセリエAの八百長をすっぱ抜くんです。その時世論は「なぜワールドカップの大事なときにイタリアのサッカー選手に傷をつけるようなことを書くんだ」という議論が出たんです。それに対して新聞社は「健全にサッカーをしてる人間に失礼だから書かなくちゃいけない。サッカーを愛しているからこそ追究する」と反論したんです。最終的には国の裁判で有罪になった選手もいます。チームは降格、罰金でした。だからこそ今、立ち直ってるわけです。メジャーリーグでもドーピング問題があってやはりスポーツ新聞が追究したわけです。ところがなぜ、日本ではそうできないんだ、と書いたら・・・消えましたね。一瞬で。日本ではちゃんとやろうとしているジャーナリストに対してメディアが応じないんです。
 ニューヨークタイムスにはいつもニューヨークタイムスの悪口を紙面に書くコーナーがあるんです。それを読んでいると「反対意見もあるんだ」ってみんな多様な意見があるってことに小さい頃から慣れて育っていくんですね。
 日本では多様性をメディアのほうが壊しているんです。つまりは記者クラブ問題になるわけですが。震災問題が一番分かりやすいんですけど、政府と東京電力の発表を報じてそれが正しいと言い続けることですね。放射能出てないって最初言ってましたし、人体に影響はありません、プルトニウムは飲めます、とかね。政府が発表すればどんなにデタラメでも正しくなっちゃう。全て悪いわけではないです。ただ、問題は多様性がない。反対意見を並べないんです。多様な意見提供して視聴者に判断させればいいのに。ひとつの答えに決めたら反対意見は絶対に許さない状態になって議論が先に進まないんです。できないんじゃなくてやるかやらないかの問題。世界中で当たり前にやっている考え方ができないんで、僕や武田さんが干されてしまうわけです。別に手柄取りたいんじゃなくてそのときちゃんと報道してたら助かってる人がもっといたじゃないか、という無力感を感じてしまうんす。記者クラブって唯一日本にしかない制度なんです。それがある限り、僕はもう無理かな、とだんだん疲れてきちゃったので今年いっぱいでジャーナリストを辞めて、ゴルフに専念します(笑)
-------------------------------------------------
0619上杉隆.JPG

緊急開催!劇場トークショー 上杉隆さん@シアターN渋谷

先月の公開記念イベントでも大相撲のことや日本経済のことをたっぷり語ってくれた上杉隆さんが、【「ヤバい経済学」から日本経済を斬る!】と題して、6月19日(日)<11:00の回の後>に今度はシアターN渋谷の劇場トークショーに登壇して頂くことになりました!

ちなみに前回のイベントの様子はこちら→
http://blog.cinemacafe.net/yaba-kei/201105/20110523_125220.html

再び禁断のトークが炸裂するのか・・・非常に楽しみです。
まだ劇場で映画をご覧になってない方は是非、この機会にご来場くださいませ!
また、今回はユーストの中継などは予定しておりませんのでご了承ください。

【劇場トークショーご報告】評論家兼エコノミスト・山形浩生さん

6月10日に新宿武蔵野館にて評論家兼エコノミストの山形浩生さんのトークショーを開催致しました。
「経済学を学んだら儲からない?」と題して、経済学の視点から映画の内容を踏まえてたっぷりと語ってくれました。
-------------------------------------
どうも。山形浩生です。頂いたお題は「経済学で儲かるか」っていう話なんですけど、まぁ儲からないっていうのが答えです。株式市場分析で有名なユージン・ファーマっていう経済学者がトレーダーに「そんなに頭いいんならなぜ金持ちになれないんだ?」と聞かれ、「金持ちだからって頭良くないのと同じ理由だ」と答えた。経済学という学問がわかっていてもなかなか儲けることはできないわけです。経済学の大半は、なぜ儲けられないのかという分析なんです。その一方でユージン・ファーマは効率的市場仮説(ニュースや材料は全て株価に織り込まれており、株価は常に適正価格になっているという考え方)というものを作ってしまって、市場原理に任せると色々なことがすごくうまくいくんだという理屈を構築して、ひいてはバカなトレーダー達を儲けさせ、世界経済をめちゃくちゃにして、グローバル金融危機の大きな原因を作ってしまったという皮肉なことがあります。経済学は自分は儲けられないけれど人が儲けることができる枠組みを作ってしまうわけです。
 シカゴ大学はユージン・ファーマもレヴィットもいる大学なんですけど、比較的何でも市場原理に任せればいいんじゃないかっていう主張をする傾向が強い学校です。それと同時に経済学帝国主義(「ドラッグの経済学」「犯罪の経済学」など経済学の考え方を他の分析に持ち込むこと)の本拠でもあります。相撲の八百長を確率で見るのが経済学かっていう違うんですけど、でも、今まで経済学として扱ってこなかったことを扱ってしまう。それが重要なんだと言っているのがレヴィットなんです。彼の分析の仕方はとても面白くて、人が全く考えていなかった視点を出してみて、統計学的に分析して、さらに人を動かしてどんな要因なのかって出していく。そのやり方が彼の魅力です。一方で批判もあります。レヴィットより前にシカゴ大学にいたゲーリー・ベッカーは犯罪、売春、ドラッグの経済学をやっていたときに、日本のエラい経済学者は「そんなくだらないことで経済学を使うなんて許しがたい!」と批判したんですね。ところが、その批判してた人達が晩年になってくると、みんな言い始めるわけです。「経済学はお金だけ追求してるのはよくない」「資本主義が破壊してしまう」って。人間らしさを取り戻した心のある経済学が必要なんだって。
 今回の世界金融危機が起きたときにもやっぱりみんな同じこと言いました。拝金主義の完全合理主義の経済学は間違っている。新しい経済学を出してこなきゃいけない。じゃ、それって何?どうすりゃいいの?って話になったときにやっぱり出てくるのはレヴィットみたいな研究なんです。どうやって具体的に人を動かしているのかということを曲がりなりにも説明するやり方、お金以外のインセンティブがお金と絡んで人を動かしていくというのを説明するやり方です。実はこれは日本の頭の固いほうの経済学者達が否定してきたことでもある。人間の心のある経済学っていうのはどういうふうに入れたらいいのか?今のままだとレヴィットがやっている研究は、お金を儲けるにはどうしたらいいのか、と人が儲ける枠組みを作ってるだけになってしまうかもしれないんです。
 例えば今、出ているのは保険加入の募集をするときに、用紙に「私が担当です」ってキレイな女性の写真を付けるといきなり加入率が高くなる。女の子の写真がついてるからって何の特もしないのに。レヴィットの話を応用すればこういった話も出てくるだろう。他の分野で人を動かして儲ける話が出てくるかもしれない。儲ける人っていうのは人が全然儲からないって思うことをやって儲けるんです。今は全然関係ないと思っても10年後くらいにレヴィットバブルみたいなのができて世界がまた佳境に陥ることがあるかもしれないと思っています。


―インセンティブというのは有効なのでしょうか?
有効じゃないものをインセンティブとは呼ばないんですね。映画にも出てきましたが、ストレートにやってできるものでもないし、裏をかくこともできる。思ったより簡単ではないです。

―負のインセンティブ、例えば「成績が落ちたら罰金」より「成績が上がったらお小遣いがもらえる」のほうが効果があるでしょうか?
やってみないとわからないですね。「成績悪い奴はバケツ持って立ってろ」っていうやつですよね。それは今は(倫理的に)やっちゃいけないことになっていますけど。ひょっとしたらいけるかもしれない。それはまだ実験してないと思います。

―それを応用して、会社では行われてますか?
いっぱいあると思います。成果主義とか能力主義がうまくいったかどうかっていうのは大きな論争の的になっています。学校の成績をあげるっていうので、成績をあげたらお金をあげるっていうよりはもっと別のわかりやすいインセンティブ、「本を毎週3冊読めばお金をあげるよ」とかそういうやり方だと勉強の仕方はわからなくても本を読む習慣はつくし、基礎学力がついてきて成績があがるらしいという研究は出てます。結果を結びつけるために間のプロセスを手取り足取り教えてあげるといいのかとか、「これだったら絶対」というものを定義するのは難しいところです。

―相撲の八百長についてはどう思いますか?
統計学については目新しいものはないです。ただ、誰もそんなことを考えつかなかったというものをやっているのがレヴィットなんです。難しいことは浸かってないので、コロンブスの卵だったわけです。昔はコンピュータで計算出すにも金がかかったので、「こんなくだらないことに使わせるか!」っていう話になってました。

―人を使って実験をする経済学ってどんなものがありますか?
実験経済学というデカいものはあります。一番簡単なのは「100円やったら逆立ちするのか」とかそういうことをやって統計を取るというやり方もあります。あとは「このお金をみんなに分けてあげなさい。分け方は任せるからどんなふうに分けますか?」って言って分ける人の動機付けだとかそういうものを見る実験というのがあります。相撲の八百長とかは実験するわけにはいかないので、統計的に因果を露出にする手法がいくつか編み出されています。ただ、それが絶対かと言うと議論の的になるのでそれによって経済学が栄えているっていうこともあります。

―AKBの経済学ってどう考えてますか?
 実はネット上で闘ってることでもあるんですけど(笑)僕はあまり認めてないんですね。「もし○ラ」はそんなにヒットしてないって聞くとあの人気は少数の人が支えていて、バブル的に人気を高めているのだと思う。リーマンショックを地でいくような営業モデルではないかと思っています。いずれそのバブルが崩れてCDが売れなくなったら「それ見たことか」ってなるんですけど、そこらへんは今後1年くらい注目して見て頂きたいです。
-------------------------------------
0610山形浩生.JPG

【劇場トークショーご報告】映画評論家・町山智浩さん

0609町山智浩.JPG6月9日(木)の夜に新宿武蔵野館で劇場トークショーが開催されました。
今回のゲストは映画評論家の町山智浩さん。
平日だというのに立ち見が出るほどの賑わい!
『ヤバい経済学』の裏話をたっぷりと聞かせてくれました!

----------------------------------
最初に映画を観たときは、原作そのまんまだな、と思いました(笑)相撲は取材が入ってましたけど。ラジオで八百長を告白しようとした人が謎の死を遂げてるって言った後、ちょっとヤバくなって公開できるの?って感じになったんですよ。そもそも相撲は神聖な儀式とスポーツが合わさった特殊なものなんです。横綱が負けるってことは国難と結びついちゃう。ヒーローが負けるって許されないことですから、本来八百長であるべきものなんですよね。スポーツじゃない。だから今回、八百長があったってみんな怒ってるけど、怒ること自体おかしいんじゃないかなって。
「フリコノミクス(原題)」って本はレヴィットさんとダブナーさんが書いたものですけど、名前の研究とインセンティブの研究は、実は映画にも出てきたローランド・フライヤーっていうハーバード大学の教授がやっている研究なんですよ。彼は黒人で貧しい環境だったにも関わらず26歳くらいでハーバードの教授になってちょっとしたヒーローだったんですよ。
 名前の差別問題は「プレシャス」って名前が典型的な例ですね。「プレシャス」ってタイトルの映画もありましたけど。大切、かわいいって名前つけといて親が「このバカ娘!」って虐待するわけです。日本でも同じで、「麗」って漢字を子供に付けちゃう親は無責任きわまりないですよね。水商売に見える名前付けたら親失格ですよね(笑)
 フライヤー教授の人生ってテレビでドキュメンタリー番組にもなってましたが、すさまじいんですよ。産まれてすぐ母親が行方不明で、父親はレイプ犯として捕まっちゃう。フライヤー君は13歳のときに自分の出生証明書を偽造してマクドナルドで働くんですね。マクドナルドで働いてもしょうがないと思うんですけど、目的はレジから金を盗むことだったんです。盗んだ金で車を買って車でテキサスからラスベガスのギャンブルに行ってマリファナを買ってきてそれをテキサスで2倍3倍で売るっていう商売を始めるんです。そのお金で父親の保釈金払っちゃう。彼の従兄弟はクラックっていうコカインをフライパンの上でベーキングパウダーと水を混ぜて、熱を加えて乾燥させたものを作ってたんです。覚えといたほうがいいですよ(笑)。クラック作ったフライパンで子供にホットケーキ作ってあげてたりしてたんですね。で、その従兄弟一家が警察に捕まっちゃって、友達も強盗で捕まっちゃったりして、もう八方塞がりになっちゃったんです。でも彼は体格がよかったからフットボール選手として奨学金で大学に行ったんです。
 そんな人生だったから、彼は「どうして貧しい黒人ってだけでこんなことになっちゃったんだろう?」と考えたんですよね。そのときに経済学と会って、インセンティブという概念とぶつかって論文を書いて、それがハーバードに認められたんです。彼がまだ26歳くらいの時に。彼をハーバードの教授にしようって決めたのがラリー・サマーズって「ソーシャルネットワーク」に出てきた嫌な学長なんですよ。ちなみにサマーズは「科学の分野で女が成功しないのは女がバカだからだ」って言っちゃってクビになっちゃったんですね。
 フライヤー教授は勉強するっていうインセンティブが数値化できると自分のような環境に育つ人でも勉強ができるようになるはずだ、と考えたんですね。高校生にお金を渡して成績をあげようっていう実験はアメリカでは大変な問題になりました。
「お金をあげるから成績をあげろ」って言っても成績、あがらないんですよね。なぜなら成績のあげ方がわからないから。例えば「本を読め」「授業中手をあげろ」って言うとできるんですよね。具体的に言わないとダメ。どうすると一番成績が上がるのかというと「必ず1回先生に質問をしろ」って言うんです。質問をするためには自分は何がわかってないかを調べなきゃいけないから。日本でも生徒が質問をするように引っ張るような授業ってできてませんよね。たいてい先生が答えを教えてそれを生徒に覚えさせるっていう授業ですから。そんな授業じゃ勉強できるようにはならない。そういった研究をTime紙で発表してます。

----------------------------------

アレックス・ギブニー監督からのメッセージ

「ヤバい経済学」が新宿武蔵野館、シアターN渋谷で公開されました。
6/4(土)~川越スカラ座、シネ・リーブル梅田でも公開されました。
みなさん、お楽しみに。

「ヤバい経済学」は5つのエピソードを5組の監督がそれぞれ作ったオムニバス形式の映画となっております。
その中でも注目の相撲の八百長のエピソードを担当したアレックス・ギブニー監督からメッセージが届いていますので、ご紹介します。

映画の日本公開について
「ヤバイ経済学」の中で、私が監督した大相撲のパートが日本で公開されるのは大変うれしいです。実は父も私も長い間、日本に住んでいました。私は、八百長がない大相撲が大好きです。このパートを監督することは、スポーツや社会全般の腐敗を描くために、最高の機会でした。ただし、これは、日本だけの特別の問題ではないのです。腐敗は今やどこにでもあることなのです。その中で日本は、情報が隠されやすい傾向があり、それゆえにスケープゴートにしてしまいたくなる社会なのだと感じています。

大相撲の八百長に関して
日本の八百長相撲の興味深い点は、個人の報酬と言うよりもグループのための報酬に焦点が当てられていたことです。 全ては、トップクラスに居続けるためで、上の方が落ちてこない仕組みが出来上がっているのです。
私のシークエンスでは、私は最高裁のブランデイス判事の言葉を引用しました「太陽は最高の消毒剤である」と。
常に告発者やジャーナリスト、エコノミスト(ヤバい経済学者さん)が不正に注目し続ければ、八百長は減っていくだろうと思います。相撲界内部からの告発者をもっと大事にすれば、八百長は少なくなるでしょう。

被災した方々、日本の皆さんへ
日本は、目の前のおそるべき悲劇に耐えています。しかし、日本は元気な社会ですから必ず回復すると信じます。
一方、この悲劇から大事なことを学ぶべきです。それは、いくら真実を隠しても、その責任は負わなければいけないということです。原子力産業と本来それを取り締まる省庁が癒着していたせいで、原子発電所は、この巨大な自然災害に対処できない欠陥設備のまま、ほおっておかれていたのです。大相撲の八百長の件も同じですが、どこからも干渉されず、ごく内輪だけで成立してしまうような硬直化した組織には、えてしてこのような見過ごしが起こりうるのです。
もし、今回の 震災について、 「ヤバい経済学」から学べることがあるとすれば、社会は告発者の声に耳を傾け、小さな声をも大事にすべきだということです。 そうしないと、いつしか大きな腐敗が私たちをダメにしてしまうでしょう。