シネマカフェ映画業界人ブログ

ヒース・レジャーがくれた夏の想い出

2008年02月10日 by 沖田敦 (プロフィール)   RSS配信

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朝、身支度をしながらCNNを観ていたら、オーストラリアのパースで営われたヒース・レジャーの告別式が簡略的に報道されていた。サングラスに表情を隠したミシェル・ウイリアムスの姿も映し出されていた。彼女はこの告別式でシェイクスピアの詩を朗読し、彼への最後の別れの言葉としたそうだ。

上の画像は、『ブロークバック・マウンテン』がヴェネツィア国際映画祭で上映された日の翌日に撮影したもの。映画祭の上映に際して現地入りしていた僕たちは、会食会や日本人向けのジャンケットを含め、限られた時間だったけれど彼とコミュニケーションする時間を持てた。

このとき印象的だった事がある。全ての公式行事が終了した翌日の昼、僕と田中裕子はホテルのブールサイドでランチしていた。そこにヒースがTシャツにサーフパンツという出で立ちで現れ、Tシャツを脱ぎ捨てると、僕たちとは対面の位置から勢い良く泳いで来た。ヴェネツィアじゃあ、こんなシチュエーションで俳優達と遭遇するなんて事は良くある話だが、びっくりしたのはちょうど僕たちの方へと泳ぎつきブールの淵から顔を上げた彼が、満面の笑みで手を振った事だった。僕も田中裕子も自分たちの背後に彼の知り合いでもいるのかなぁと振り返ってみたけれど、誰もいない。彼は紛れも無く僕たちに手を振ってくれていた訳で、僕は何となく気恥ずかしくて、良く居る日本人の様にぎこちない笑顔を返すしかなかった。あの夏の終わりの、輝くばかりの陽射しをその笑顔に反射させて、無邪気にも我々に愛想をくれたあの日の情景が忘れられない。

ヴェネツィアの晩夏は、特有の黄金色の光に溢れていて、すべての水面はおろか、建物の白い壁も往来する人々の顔にすらもきらきらと輝きを与え、陰影を刻み込む許可を与えない。あの日のヒース・レジャーはまさにそれらを照らす、ヴェネツィアの太陽そのもののように思えた。

ミシェル・ウイリアムスが彼に捧げたというシェイクスピアの詩を藤生が翻訳してくれたので、下記に付しておく。


ソネット第18番
ウィリアム・シェイクスピア

あなたを夏の日と例えようか?
あなたの方がより美しく、おだやかである。
激しい風が5月の愛らしい蕾を揺らし、
そして夏はあまりにも短く過ぎ去ってしまう。
天の瞳はときにまぶし過ぎ、
かと思えばその金の顔はしばしば曇る。
どんなに輝いているものもいつかは輝きを失う。
それが偶然にか、はたまた自然の摂理によるのかの違いはあれど。
しかしあなたの永遠の夏は色褪せない。
あなたの美貌が失われることもなければ、
死神があたたを自分の影に捉えたとうそぶくこともない。
あなたは永遠の詩の中で時そのものへと成長しているから。
人が呼吸をし、目が見える限り、
この詩は生き、この詩があなたに生命を吹き込む。


The Sonnets no.18
William Shakespeare

Shall I compare thee to a summer's day?
Thou art more lovely and more temperate:
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer's lease hath all too short a date:
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimmed,
And every fair from fair sometime declines,
By chance, or nature's changing course untrimmed:
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall death brag thou wand'rest in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st,
So long as men can breathe or eyes can see,
So long lives this, and this gives life to thee

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