シネマカフェ映画業界人ブログ

ベルリンからハンブルグへ

2008年02月13日 by 沖田敦 (プロフィール)   RSS配信

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ベルリンでは何の収穫も無く、第3の目的地・ハンブルグへ列車で向かいます。
ハンブルグへは1時間30分ほどの旅。

途中、食堂車のバーで一杯引っ掛けて、虚しさを紛らす僕たち。

脚本家協会のストの影響は、映画祭のマーケット部門にもダイレクトに影響が出ていた。大半の注目作品はカンヌに持ち越し。『ブロークバック・マウンテン』『ブリック』をセールスしていたフォーカス・フィーチャーズなんて、担当のピーターがロスから持ち込んだウイルスで、フォーカスメンバー全員がインフルエンザに伝染してしまい、マーケット半ばで閉鎖状態に。もともと売るものが少ないからいいのかもしれないが、正直、フォーカスのブースに行った日の夜は、我らがワイズスタッフ全員に悪寒が走り、即座に葛根湯を飲み、根気でピーター・ウイルスを退散させた次第。インフルエンザはともかく、ほかの英語圏のセラーでも、今回のマーケットの目玉となるような新しい企画は提示されなかった。いづれも“カンヌまで待ってくれ”といった感じ。

しかしそれでも、ヨーロッパ系のセラーが扱っていた作品の中には注目作品が無い訳ではなかった。トラン・アン・ユンが撮影中の新作『I COME WITH THE RAIN』と、ソダーバーグ本人がベルリン入りまでしてセールス活動をした『CHE』が初めてのプロモリール(予告編のようなもの)、または新たなフッテージ(シーン)を公開する一方、マーティン・スコセッシがローリング・ストーンズに次いで再びアーティストにフォーカスを当てるというボブ・マーリーのドキュメンタリーや、ジュリアン・シュナーベルがヴェネッサ・パラディをヒロインに向かえ企画されているという『CHANEL』などが、我々バイヤー仲間の話題を集めていた。だが日本の配給会社はこれらの企画に慎重で、多分契約までに至らなかったのではないだろうか。

僕もトラン・アン・ユンとソダーバーグのプロモリールは観たが、前者は極めて象徴的で重要な役となるパートを演じる木村拓哉、つまりこれまでアイドルとしてのイメージに固執して常に木村拓哉であり続けている彼が、どの程度映画俳優としての存在感を見せるかがこの作品の明暗を分けることになりそうだ。主演のジョシュ・ハートネットやイ・ビョンホンはアン・ユン特有のセンシャルかつハードな映像の中で、新境地を開拓しているようには見えた。音楽にレディオヘッドとクズタヴォ・サンタオラヤが起用されているのも大きな魅力だ。ソダーバーグの『CHE』は、男性バイヤーにとってカリスマ的存在であるチェ・ゲバラ信仰のようなものが、作品の評価を底上げしているように思う。見せられたフッテージからは、ただならぬリアリズムを感じさせられたが、この凄みが混沌、あるいは破綻にならなければいいのだが。ソダーバーグは完成度に波のある監督。いづれにせよシネフィル向けの作品であることは確か。前者は300万ユーロ、後者は700万(2部構成)ドルという高額なアスキングをどう評価するのか。完成を待って買付のコンペに参加しても遅くはないかもしれない。

ベルリンからハンブルグへ、流れる車窓の風景を無意識に眺めながら、所詮ワイズポリシーには無縁と思われるあれこれに想いを馳せていた…。

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