土曜の朝早くに成田に着いた僕たちは、幸い日本中がお盆まっ直中に突入の今週からゆるゆると社会復帰を果たすこととなった。実質的には仕事復帰初日、一週間ぶりのオフィスは、普段の3分の1のスタッフが出社しているだけで、静寂の限り。いつもなら宣伝の大上あたりがどこかの編集者と馬鹿話で盛り上がり、談笑する声が室内に轟いているはずなのに、騒音の主は僕たちと入れ替わりに故郷の山口へと帰省。居残り組ぼそぼそ系の野郎スタッフが受話器を片手に何を話してるのやら……。

留守中に見落としていた新聞を読み返していたら、ダニエル・シュミットが今月5日に亡くなっていた事を知り、ちょっと脱力する。学生時代に見た彼の『今宵かぎりは…』は、忘れ難い映画だった。聖ネポムクの日の夜、1年に一夜限り、ある館の主人と召使いが入れ替わって興じられる幻惑の宴。夢か現か、館の主たちによって演じらる余興の数々が、粒子の粗い映像に映し出されると、何とも云えぬ耽美の世界が展開される。ヴィスコンティの絢爛豪華とはまた違って、彼の極私的なデカダンの世界が僕は大好きだった。「まるで夢のような世界…」という表現があるけれど、決して見た事の無いような夢ではなくて、その夢はひょっとすると昨晩見たかもしれないような夢、それがシュミットの世界だった。『ラ・パロマ』や『ヘカテ』も良かったなぁ…。
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