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April 07, 2006
『美しき運命の傷痕』エマニュエル・ベアール & ダニス・タノヴィッチ監督来日記者会見

「トリコロール」シリーズなどで知られ、1996年に54歳の若さで急逝した巨匠キェシロフスキ。本作『美しき運命の傷痕』は、デビュー作『ノー・マンズ・ランド』でアカデミー賞外国語賞ほか数々の賞を手にした若き天才ダニス・タノヴィッチ監督が、その遺稿を映画化した愛と再生の物語だ。日本公開を前にタノヴィッチ監督と主演を務めたエマニュエル・ベアールが来日し、記者会見が行われた。

ベアールは2年ぶりながら既に10〜15度目の来日。「毎回来日して大変嬉しく思うのは、日本の皆さんの好奇心、また笑う感性と感動する感性です。今まで日本には仕事で来ることがほとんどで、バカンスでは一度も来たことがありません。次回は是非、バカンスで来日したいと思っています」と挨拶した。

hell_2.jpg『8人の女たち』のフランソワ・オゾンなど多くの監督の作品へ出演してきたベアール。今回、長編2作目となる若き天才タノヴィッチ監督との仕事について、「この作品はテーマが暗示しているように、大変難しく、特に登場する女性のキャラクターたちの苦しみを本当に鋭く描いています。監督は辛い苦痛を伴った人生を歩んでいく女性を演じる私たちに、ユーモアと笑いと命を、作品とは真逆と思われるかもしれませんが、そういった部分を与えてくれました。撮影現場では非常に楽しい雰囲気で撮影することが出来ました」と話した。

さらに、「作品は非常に叙情的で詩情に富んで、監督は画家的な感性を持って取り組んでいたと思います。その感性で私たち女優を暖かく包んでくれました。何よりも監督は自身がキャスティングした俳優たちに全幅の信頼を置いてくれて、私たちはとても仕事しやすく、勇気をもらうことができました」と2人の信頼関係を披露した。

タノヴィッチ監督のデビュー作はボスニア紛争を舞台に描いた戦争コメディ『ノー・マンズ・ランド』。男性兵士を主人公に描いた男臭い前作に対して、今回は3人の姉妹の人生をじっくりと描いた物語。この対比について監督は、「監督が男性であることに、そして前作の次にこの映画を撮ったことについて、多くの観客の方が驚かれたと思います。随分タイプの違う作品ですし、けれどもそれこそが映画を作っているいちばん楽しいところです。まったく新しい世界を探求する、新しい場所や世界に足を運ぶことが出来る、これが映画作りの醍醐味ではないかと思います」と語り、また主人公の3姉妹を演じた女優たちについては「また仕事をしたいと思っています。特にベアールさんは、こんなにも情熱的な方は他に存じ上げません。仕事には150%の力で、本当にそこまでやるのかというくらい努力を惜しまない素晴らしい方です」と絶賛した。そして「もし今回作品をご覧になった方が、女性像についてリアルに描かれていると感じられたら、それは自分の力ではなく参加して下さった女優さんたちの力ではないかと思います」と続けた。

巨匠の呼び声も高いキェシロフスキの遺稿の映画化に挑んだ2人。2人とも生前の監督と面識は無かったが、彼が残した作品を観、インタビューを読んだりと造詣を深めたという。映画作りに重圧を感じなかったか?という質問に監督は、「まったく感じませんでした。私は重圧というものはサラエボの戦争中に感じて以来、一度も感じたことがありません。映画作りはとても楽しい瞬間です。困難であればあるほど面白味が増します」と話した。

「映画化したいと思った理由のひとつは、自分ではまったく書かないような脚本だったからです。女性の世界にここまで足を踏み入れるなんて、彼は天才だなと感じました。キェシロフスキ自身が手がけた脚本であると知っていましたが、あまりにも女性の心理に迫る内容だったので驚いたのです」「彼の残した言葉で、とても自分の糧になっているものがあります。“自分はアーティストではない。疑問に対する答えを持っていないからだ。自分は常に問いかけをするのだ”と。これはとても美しい名言だと思います」とキェシロフスキへの強い敬意を明らかにした。

そしてベアールも「彼のシナリオには役者として演じてみたいという衝動を感じました」と脚本への賛辞を交えつつ、「映画作りには命を、音を与えて、肉付けしていく作業があります。キェシロフスキのシナリオは構造的に本当にしっかりしたものでしたが、それだけでは映画にはなりません。出来上がった作品を観れば、“これはタノヴィッチ監督の作品だ”と言えると思います」と新進気鋭の監督の仕事を称えた。

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今やフランス映画界を代表する女優として、その地位を不動の物としたベアール。彼女が本作への出演を引き受けた理由も、タノヴィッチ監督自身がきっかけだという。「作品自体に惹かれる前に監督の目に惹かれました。その後、ストーリー、シナリオ、キャラクターに少しずつ惹かれていったのです」。物語に登場する女性たちが様々な感情の起伏を経て、物語の最後に再会する。再会に至るまでの女性たちの感情の動きがとても細やかに描かれている点に、最も感動したと話した。

キェシロフスキの代表作「トリコロール」シリーズと同じように、本作も3姉妹それぞれに“色”がイメージされているという。「自分にも3人の子供がいますが、同じ家で育ち、同じご飯を食べ、同じ物語を聞かせているにも関わらず、ものすごく性格が違います。同じように本作に登場する3姉妹たちもそれぞれ性格が違うのです。人間とは、例え血が繋がった兄弟であろうも、人それぞれ個性が違うのではないかと。姉妹たちの顔が似てないという声もありましたが、それもいいかなと思います。人間とは差があるからこそ美しい、全員が同じだったら面白くないのではと思ったからです」と3姉妹の特徴を紹介し、「ベアールは役柄だけでなくご自身も赤、情熱の赤以外の色は考えられないと思いました。末娘を演じたマリー・ジランは無垢さの白と若さの緑です。唯一、ご本人と役柄のイメージが異なるのはカリン・ヴィアールです。彼女は青という色を当てられていますが、ご本人はまったく違う性格です」と話した。

最後に監督はスタッフへの感謝を語った。「3人に“色”を付けることが実現できたのは、素晴らしいスタッフの協力がありました。“色”のコンセプトを決して観客の方に押しつけ過ぎず上手に表現出来たのは、特に美術スタッフのお陰だと思います」。

新進気鋭の監督がフランス映画界最高のスタッフ、キャストと共に作り上げた本作に、故・キェシロフスキも新たな時代の到来を予感しているに違いない。

『美しき運命の傷痕』
監督:ダニス・タノヴィッチ
原案:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:エマニュエル・ベアール、カリン・ヴィアール、マリー・ジラン、キャロル・ブーケほか
劇場情報:4月8日よりBunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマほか全国にて順次公開

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