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March 23, 2006
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80年代初頭、インディーズ・ムービーの金字塔と呼ばれた長崎俊一監督による8ミリ映画が23年の時を経て再びよみがえった。その名は『闇打つ心臓』。主役のリンゴォと伊奈子を演じたのは当時20代だった内藤剛志と室井滋だ。その二人は今、かつてと同じ役で同じタイトルの映画の中で再会する。現在と過去、ふたつの時代の伊奈子を演じた室井滋さんにお話をうかがった。

これからこの映画を観る人の中には8ミリ版を観ている人もいるだろうし、今回初めて観る人もいるだろう。今、なぜ本作はリメイクされることになったのだろうか。「23年前の8ミリ版をプロデューサーの佐々木史朗さん(オフィス・シロウズ代表)がご覧になっていて、あの映画にずっとこだわりがあったらしいんですね。佐々木さんから、全ての人が受け容れて楽しめる映画ではないけれど強い衝撃を与えるものを作りたいという話があって、“リメイクしようと思うけどどう思う?”と言われたんです。私の中でも特別な一本だったのでぜひやってもらいたいとお答えしました」。 

早稲田大学のシネマ研究会で自主映画に出演していた室井さんにとって長崎監督は憧れの人だったと言う。「私は81年に大森一樹さんの『風の歌を聴け』でデビューしたんですが、82年の『闇打つ心臓』のほうが本当のデビュー作のような気がしているんです。今回は昔の映像を入れることの是非についても聞かれましたがそれは全く問題ありませんでしたし、出番もちょっとじゃなくてたくさん出させて欲しいと言いました。内藤(剛志)さんにも同じ質問をしたら同じように答えられたらしくて。ただ、思っていたより8ミリの映像がたくさん入っていてちょっとびっくりしました!」。

リメイクといっても、オリジナルキャストの二人が再会し、かつての自分たちを彷彿とさせるような江口のりこと本多章一のカップルに出会うという二重構造になっている。「リメイクという言葉が一番簡単だからそう言われたのだと思いますが、普通のリメイクとは違うという思いはすごくありました。若い二人のパートが過去の自分たちを彷彿させる部分はありますが、彼らは昔の伊奈子とリンゴォだとと考えることもできるし、現代の別の人たちという見方もある。そこは前提となる映画があるからこそできる面白さでもあるので、(リメイクする)抵抗は全くありませんでした」。

内藤剛志とリンゴォ、室井滋と伊奈子。彼らは実人生と同じように役の上でも歳をとっている。画面に映っているのはリンゴォと伊奈子というキャラクターだが、それは同時に内藤剛志と室井滋本人でもある。「長崎さんの現場では普段の自分を忘れて自然にその役になりきることができるんです。今回の撮影前に昔の映像を観るかと聞かれたんですけど、私の中でしっかりした記憶もあったし、変に昔の何かをなぞって伊奈子を作るのもちょっと違うなと思っていたのでそれは断りました。でもできあがったものを観てから23年前の自分を観ると「なんだこの甘ったるい喋り方は!」と思ったりしてやっぱり変わったんだなという思いはありましたね」。

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1982年と2006年では、作品が作られた意味も観客も異なってくる。室井さんは8ミリ版が作られた当時をこうふり返る。「バンクーバーの映画祭で昔の8ミリ版を全部観たのですが、改めて観てみると当時はやっぱり子供を殺す事件とかはまだ珍しかったし、今のほうが切迫してひどくなっている。昔の二人は悪いやつらではあるんだけども生きることに貪欲でわりと明るいんですよ。今のバージョンを見ると、若い二人が(演技がではなく)切なくて世代的に暗いのかなという気がします」。

映画の中でリンゴォは昔の自分を殴りたいと言う。過去の自分との折り合いについて室井さんはこう語る。「二人は本来ならば許されることのない犯罪者なわけです。その闇や傷を抱えてその後の時間を過ごしてきたのだから再会してもただの同窓会のようにはいかないし、そのあたりを映画の中でどう処理していくか…昔の過ちに対する現在からの二通りの見方を抜きにしてはリメイクは成立しません。実際にどう思っているかではなく、それについて話し合っているということを入れることが大事だったんじゃないのかなと」。

最後に、今度初めてこの映画を観る観客の方へ、室井さんからメッセージをいただいた。「二人以上の男性とつきあったことがある人はそれだけでも何かあると冗談でよく話しているんですよ(笑)。難しそうな映画だと思われがちだけど、構造をあまり気にせず見てもらっているうちに不思議で面白いものに見えてくるんじゃないかな。きっとその晩いろいろと思い出して人生について考えてもらえるかと思います」。

大友良英が音楽を手がけ、カヒミ・カリィがエンディングテーマを担当する2006年版の『闇打つ心臓』。100本近く出ている自主映画の中でも強烈な一本だと室井さんが自認する8ミリ版は、自著「まんぷく劇場」においても“死ぬまでにもう一度観たい百本”に自分の出演作として唯一選出している。今度はその中に二本目の出演作が加わるに違いない。

『闇打つ心臓』
監督:長崎俊一
出演:内藤剛志、室井滋、本多章一、江口のりこほか
配給:スローラーナー
劇場情報:4月8日より渋谷シネ・アミューズにてレイトロードショー
(C)2005『闇打つ心臓』パートナーズ

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