フィンランド・ヘルシンキの街角で、日本人女性サチエが経営する「かもめ食堂」。そこは決して“カフェ”ではなく、あくまでも日本的な“食堂”。メニューももちろん和食定番のしょうが焼きや豚カツ、そして梅・鮭・おかかのおにぎりだ。最初は客1人来ないこのカフェにも、やがてこの心こもったメニューが多くの人をひきよせる。美味しいものは幸せ、それはどこの文化でも同じなのだ…。
『かもめ食堂』はそんな暖かい食堂と、そこに集う人たちを描いたちょっと不思議で、心がほっとする優しい映画だ。監督は『バーバー吉野』で一躍名を広めた荻上直子。そして小林聡美、片桐はいり、もたいまさこという個性的な女優陣も魅力的だ。公開を控え行われた舞台挨拶にはキャスト・監督、そして原作者である人気作家の群ようこが登壇。映画さながらの“かもめワールド”を繰り広げた。
出演者でありながら、本日の司会を任せられた片桐はいり。「私はフィンランドのヘルシンキにある“かもめ食堂”の従業員の代表として参りました、ミドリ役の片桐はいりです。ミドリはいきなりある理由でフィンランドに旅立ちまして、たどり着いた“かもめ食堂”の店主であるサチエさんにすごくお世話になりました。ではそのサチエさんを紹介したいと思います」。
サチエを演じるのは小林聡美。「本当にのんびりと楽しく撮影させていただきました」と邦画初のオール・フィンランド・ロケの様子を語る。「(フィンランドの人は)静かで、“オー!イエイ!”とか、そういう雰囲気ではなく、良くても“よかったよ”ってあんまり言わない、“くそー”と思ってもあんまり悔しがらない。感情表現の日本人にわりと近いものがあると思います。都会でさえゆったりとしています」。
最初は“かもめ食堂”にお客としておとずれ、3人目のスタッフとなるマサコを演じるのは、荻上監督作品で常連のもたいまさこ。もたいさんも「フィンランドというところは、日本人の感覚に似ているところがありまして、親しみやすい国でしたね」と同意する。日本でいきつけのお店があるか?という質問には「外食するのは苦手で、入ってもお蕎麦屋さんくらいなので、かもめ食堂のようなお店があったら行きたいと思います」と言う。

::フィンランドは「本当にのんびりしていて、危険好きの私としては、安全すぎて物足りないくらい」と笑う片桐さん。実は“かもめ食堂”はヘルシンキに実在する“スオミ食堂”というお店がモデルになっているが、「このお店のケータリングはとても美味しかった!」と振り返る。
::原作者の群ようこさん(左から2番目)と、荻上直子監督(中央)。実は群さんはヘルシンキには行ったことがないそうだ。「カウリスマキの映画は好きですが、この原作を書くのには、観光ビデオ2本と、地図帳と、旅の指差し単語帳を資料に書きました」。監督も「どんよりしたイメージがあったのですが、ほんとに空が青くて高くて、澄んだ空気でゆったりのんびり、走ってる人がいない国でした」と語る。
「ご飯を食べてからご覧になってください」という小林さんのアドバイス通り、思わずおなかがなってしまいそうな程おいしそうな食べ物がいっぱいで、登場する小物から家具まですべてがとにかくキュートな『かもめ食堂』。その一方で、人はみんなそれぞれの悩みながらを抱えながらも、強く生きていくんだ、というメッセージにはきっと誰もが勇気付けられるはず。この春いちおしの本作は3月11日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開 。
::「撮影は合宿のようだった」と笑う3人。撮影中はそれぞれマイペースに行動していたようだが、撮影が終わってから3人でエストニアを旅行したそうだ。
『かもめ食堂』
監督:荻上直子
出演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこほか
配給:メディア・スーツ
劇場情報:3月11日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開