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March 31, 2006
『卍』井口昇監督インタビュー

増村保造監督版、樋口可南子主演版など過去に何度も映像化されてきた谷崎潤一郎の「卍」。今回白羽の矢が立ったのは『恋する幼虫』などでカルト的な人気を誇る井口昇監督だ。女子の描き方には定評がある井口監督だけに、究極のガーリー・ムービーとしての『卍』が出来あがった。

特に増村版との比較を覚悟していたという井口監督は、今回新たにやる意義を考えたと言う。「ひとつはキャスティングを全体に若返らせること、もうひとつは原作の持つおかしさを一種のコメディにできないだろうかということでした。どこかで軽さのある『卍』にしたかったので、フレッシュさを出せるよう意識しました」。

manji2.jpgその鍵となったのが女性二人のキャスティングで、ともすれば昼ドラのようになりがちな話にキュートなしとやかさを添える。園子役は写真家・荒木経惟の被写体としても有名な秋桜子、光子役は『東京大学物語』にも出演している不二子がそれぞれ演じているが、実はクランクイン一週間前まで決まらず「悶絶していた(井口監督)」そうだ。「会ってみたらあの二人が一番よくて、結果としてもガーリーな感じになりました。ドタバタした描写はあるけれど原作の上品さは残しておきたかったんです」。

原作の面白さを残しながら井口監督ならではのエッセンスを注入した井口版『卍』は敢えて明確な時代設定をしていない。「条件としては、大阪の話にしたい、携帯電話を出したくない、というふたつがありました。現代にするとどうしても携帯電話を出してしまうし、そうすると物語が成立しなくなってしまう。かといって原作が書かれた昭和8年当時の話にしちゃうとあまりに時代劇になりすぎてしまうので、中間をとって僕が生まれた年ぐらい(昭和46年)にしたんです。不二子さんの大きなサングラスとか、荒川(良々)君の髪型はそういう設定だからであって、ギャグのためにしてるわけではないんです(笑)」。実は下着が現代風なのだが、「リアルでいくか、キャラクターに合わせるか。今回はあの二人のセクシーさにノックアウトされてそれを強調するほうに行ってしまいましたね(笑)」とのことなので女性はぜひ注目して欲しい。

谷崎潤一郎はこの原作を、大阪弁のリズムを小説でやりたくて書いたという。だが今回の出演陣の中にはひとりも関西人がいない。「原作を読み直すとやっぱりリズム感がすごくいいので映画化するときも大阪弁は外せないなと。役者さんが困っててもこれは関西弁でやるべきだと思ったし、実は谷崎さんも東京出身の方なので、大阪の方が読むとけっこうでたらめらしいんですよ。だからリズムさえ気持ちよければぶち壊れた関西弁でもいいじゃないかと開き直りましたけどね」。

二人の女性のパワーバランスが頻繁に入れかわる危うさは、映像になるとより楽しめる。「光子と園子が並んでいるときは同等ですし、三角関係になると光子が見下ろしていたりする。目線の位置が違うことによって今置かれている状況が変わるんですね。特にこの話は立場がころころ変わって何を信じていいかわからない。位置関係や視線や表情、言葉の使い方…特に光子がポイントですね。光子によってそれぞれの立場が変わっていくので」。ちなみにアドリブゼロという二人のラブシーンは「ワンカットワンカット僕の細かい指示と意向が行き届いています!単純にラブシーンというだけではなく、ドラマに即したものにしたかった。同じ場所での行為が3回出てくるんですが、それぞれ意味合いが変わってくるようには注意しましたね」。

もちろん顔の湿疹や口の中をのぞく(!)…といった井口映画に欠かせない要素も健在だ。「書いてて楽しいことを書いていくとああなってしまうんですよね。夫が園子に光子と会っていいよと許可するにはどうしたらいいか…湿疹になって迫ってきたら許すしかないだろうと」。そのテイストは初の長編作『クルシメさん』から一環しており、井口映画の代名詞ともなっている。だが、実は毎回「今回こそは違うことをやるぞと思って始めるが、結果として同じになってしまう」のだそうだ。「同じことが好きなだけなんですよね。逆にそれを駄目だって言われたらどうしようと思っちゃうんですけど」。

そのサービス精神あふれる演出は希代のエンターテイナーでもある。「シリアスなシーンが10分続くと耐えられないんですよ。他の人の映画を観てても“このときヒロインがこういうことしたら面白いだろうなあ”とかそんなことばっかり思っちゃうんですよね」。その笑いの感覚は、井口監督とも交遊の深い松尾スズキ氏(大人計画)にも通じるものがある。「松尾さんは近いですね。松尾さんは貧乏とかダサいということをすごく嫌うんですけど、松尾さんの面白いときってだいたい貧乏ネタかダサいネタなんです。根っこはそこなんですよね。僕もそうなんで、今回だとほうれん草ごはんを踏んづけたり…」というシーンの面白さは、気がつくと巻き込まれてしまっているような一種奇妙な味わいがある。

こんなにも笑いにこだわる井口監督だが、意外なことにバラエティなどはほとんど見ないそうだ。「昔からお笑いに関しては本当に疎いんですよ…誰が流行っているとか全然わからなくて、周りの中で一番疎いと思います」。そんな井口監督の笑いの原点は実写版の『ドカベン』だという。「今回は撮る前に増村(保造)さんの『卍』と『ドカベン』を観ました。僕の好きなものが詰まっているんで、迷ったり悩んだりするとビデオで借りてきてみたりするんですよ。間抜けな描写が好きなんですよね、間抜けなことが一番面白いと思っているので」。

増村版で川津祐介が演じた綿貫役は、大人計画所属の個性派俳優・荒川良々が演じる。配役の中で彼だけはあて書きだったという。「荒川君の芝居に関してはアドリブ一切ないですからね、微妙な唇を噛みしめる間とかコロッケの食べる口の間合いまで細かく演出します。荒川さんて実は芝居が結構うまくてシリアスな芝居もできる人なんです。でもそれがあの容貌とかキャラクターで見えなくなってるんですよね。そこが荒川さんのいいところでもあり、損をしているところもあると思いますが」。ほかにも井口監督がファンだったという野村宏伸らが脇を固める。「僕が高校生ぐらいで映画を一番観始めたときに角川映画の中心にいてスターだった方なので、一緒にお仕事できてすごく光栄でしたし正直緊張しましたね。品があって出しゃばらないし、この方はすごく上手いなあと改めて思いましたね」。

「女性が困ったり恥じらったりする顔にチャーミングさを感じる」という井口監督。そんな瞬間をフェティッシュにとらえた本作は、ファッションや便箋などの小道具にもポップなエッセンスが詰まっていて女性心をくすぐる。「女性が観てすかっとするような、わりと痛快な作品になっているんじゃないかと思います。女性同士できゃあきゃあ言いながら観られる文芸ロマンですので、ぜひユーロスペースでお会いしたいなと思います」という井口監督。劇場へ足を運び、周りの人の笑いのポイントを感じながら観るのがおすすめだ。

『卍』
監督:井口昇
原作:谷崎潤一郎
出演:秋桜子、不二子、荒川良々、吉村実子、野村宏伸
配給:アートポート
(C)2005 アートポート

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March 23, 2006
『デイジー』チョン・ジヒョン、チョン・ウソン、イ・ソンジェ、アンドリュー・ラウ監督来日記者会見

2005年、一大旋風を巻き起こした『私の頭の中の消しゴム』。本作で日本中の女性を魅了した人気俳優チョン・ウソンが主演する待望の最新作が『デイジー』だ。共演は『猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』を大ヒットに導いたチョン・ジヒョン。3月22日には三角関係のもう一角を演じるイ・ソンジェ、監督のアンドリュー・ラウとともに来日した2人迎え、記者会見が開かれた。

本作のメガホンをとるのは『インファナル・アフェア』シリーズや『頭文字D』などヒット作を次々と送りだしているアンドリュー・ラウ監督。「この映画は“縁”に関する映画。縁があるけど、結ばれることがない、そういう映画です」。

daisy2.jpg::「この3人に出てもらたい、と夢の中で思いました。チョン・ジヒョンは最も好きな韓国女優のひとりで、以前から一緒に仕事をしたいと思っていました。チョン・ウソンとは香港でも何度もお会いしていて、脚本の段階から彼を想定。イ・ソンジェに関しては、いろいろな俳優をみたけど、このキャラと魅力は彼しかいないと思いました。」
(アンドリュー・ラウ監督)

daisy3.jpgdaisy4.jpg

チョン・ウソンが演じるのは愛する女性ヘヨンへの愛を伝えられない運命に翻弄される暗殺者、パクウィ。「はじめて脚本を読んだ時、気に入ったセリフがあった。パクウィがヘヨンに対して言う“もう一度はじめから出会って、やりなおそう”という言葉です。このような愛の表現、パクウィの寂しくつらい気持ちに哀れみを感じました」とストーリーの印象を語る。

daisy5.jpg幻の恋人がパクウィであることに気づかず、彼を追う刑事を運命の相手と信じて恋してしまうヘヨンを、チョン・ジヒョンが演じる。自身も「運命の愛を信じている」という彼女は役作りについて、「果たしてヘヨンは誰を愛しているのか? 下手すると幼稚なストーリーになってしまうので、観客の共感をいかに得るか最後まで悩みました。結局ヘヨンはひとりの人しか愛していなかったことに気づいた時、ヘヨンが進むべき道が明るく照らされた」と明かしてくれた。

daisy6.jpg「メロドラマにおいて一番興味深いのは三角関係」と語るのは、刑事ジョンウを演じるイ・ソンジェ。「それぞれの素性を隠して、近づけず、告白もできない。その設定に魅力を感じて出演を決めました」。ちなみに最初の脚本ではもう少し暗い人物だったが、明るいキャラクターにしてほしいと監督から指示があったそうだ。「でもちょうど(ジョンウに)成りきれたところで終わっちゃうね、とチョン・ジヒョンと言っていました(笑)」。

豪華キャストのほか注目してほしいのは、全編オランダ・ロケというスケールの大きさだ。「撮影が終わる頃には香港クルーは韓国語、韓国クルーは広東語、そしてオランダクルーは広東語の悪口まで覚えてました」と笑う監督に加えて、「天気がアジアとは全く違い、22時に沈むので、21時に夕食をとってました」とチョン・ジヒョンはコメント。さらにチョン・ウソンは「滞在中、実際にオランダの中華料理店で狙撃事件があって、スタッフにどこにいるかを心配された」、イ・ソンジェは「休みの日はよくスポーツジムに行っていましたが、普段車で通っていた所をある日歩いたら、警察に呼び止められてしまい、パトカーでホテルまで送ってもらいました」とそれぞれエピソードを明かした。

daisy7.jpg::「特に3人が出会うシーンが印象的。3人が会うのはこの時が最初で最後ですが、映画が伝えようとしたすべてがつまっていると思います。」(チョン・ジヒョン)

美しいオランダを舞台に、ラウ監督得意のサスペンス・アクションと、悲しい運命の愛を描く『デイジー』。香港のヒットメイカーと韓国のトップスターたちが織り成す切ない愛のドラマに涙すること必至だ。

『デイジー』
監督:アンドリュー・ラウ
主演:チョン・ジヒョン、チョン・ウソン、イ・ソンジェ
配給:東宝東和株式会社
劇場情報:5月27日より有楽座ほか全国にて公開
(C)i love cinema. All rights reserved.

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この夏、ホラー映画史上最高のビッグイベントが開催される。その名も「マスターズ・オブ・ホラー」とは、現代のホラー映画界を代表する13人の監督が13通りの恐怖を競う2006年最大のホラー・プロジェクト。この記念すべきメンバーに選ばれたのは、トビー・フーパー(『悪魔のいけにえ』)、ダリオ・アルジェント(『サスペリア』)、ジョン・カーペンター(『ゴースト・オブ・マーズ』)、ラリー・コーエン(『悪魔の赤ちゃん』)、三池崇史(『着信アリ』)ら13監督。まさにその「マスター・オブ・マスターズ」とも言えるトビー・フーパー監督と、日本からの唯一の参加者である三池崇史監督の夢の顔合わせがここ日本において実現した。

『悪魔のいけにえ』以来20年ぶりの来日となるトビー・フーパー監督。彼は今年、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006の審査委員長もつとめている。そこではこのプロジェクトで作られた最新作『ダンス・オブ・ザ・デッド』がいち早く上映された。一方、岩井志麻子の原作を映画化した『インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ〜』を出品した三池崇史監督。二人は互いの作品を観た感想をこう語る。「来日前夜に観たのですが、人生初の悪夢を与えてくれました」(フーパー)、「30年前(『悪魔のいけにえ』)の復讐ができて少しよかったです。あの一本で確実に人生が変わりましたから」(三池)。

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::(左)トビー・フーパー、(右)三池崇史監督

フーパーの『ダンス・オブ・ザ・デッド』もリチャード・マシスンの小説が原作となっている。「昔から彼の作品は好きでしたので、当然の選択でした。中でもこの物語は現代アメリカ社会を投影しています。今は輪が回転しているなら下降している時期です。このときに何か自分でも重要なことができるのではと思いました」。また、音楽には元スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンを起用している。「私はスマッシング・パンプキンズのファンでしたし、彼も映画音楽をやりたがっていたので今回はいいチャンスでした。彼なら素材を理解してくれるのではないかと思ったのです」。

日本人監督としてただ一人選ばれた三池監督だが、既に海外でも多数の作品が上映され、高い評価を得ている。「微妙な全米デビューになってしまいましたが…(笑)できれば外で自分のフィールドを再現するよりも、自分のフィールドで作ったものが外に飛び出していくのがいいです。アメリカに対して超法規的な活動ができれば」。

今回の撮影はかなり監督の自由が保証されてたという。特に監督に編集権がないアメリカ映画界で活動するフーパーにとってこの意味は大きかったようだ。「ファイナルカット権、キャスティングなど全てにおいて完全なる自由が与えられていました。これはアメリカの映画界では信じられないほど名誉なことで、自分も成長できたと思います」。三池監督はこの自由をまた別の感覚でとらえていたようである。「表現したいことを止める作業が仕事です。それをどこで止めるべきか…迷路にはまり込んで、正気に戻ったら作品が出来上がっていました」。

それだけに今回はフーパーが本当にやりたかったことがかなりの確率で実現できたと考えられる。「自由で大変だったことは特になく、解放感だけがありました。ハリウッドではいわゆる“ペーパー・ムービー”と呼ばれる物語がすべて会話で説明されてしまうような映画が多いのですが、そうではないものが作れたと自負しています」。その出来は三池監督も絶賛する。「今回のフーパーの作品は体験型で、ストーリーよりも視覚が脳に直接はたらきかけてきます。立派な大人になってこういうものが作れるかといったら…やっぱり無理ですね(笑)」。

また、お約束のJホラーについては「ただの脚本ではなく、真の意味でのシネマです。三池監督の『オーディション』は観ていてキリキリするが、自分でも再確認のつもりで何度も見返してしまいます」とフーパー。それを受けた三池監督は「(発言が)大人だなあ…。『オーディション』は黙殺されたJホラーだと思っていたので嬉しいです」と喜びを見せた。

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日米のホラースタイルの違いについて「何に対して恐怖を感じるかの違いだと思います。アメリカのホラーは恐怖を克服したり笑い飛ばそうとするパワーがある。日本はそのパワーを弱らせたところを踏みつけるようなところがありますね。これは国民性でしょうか」と分析する三池監督。最後には三池作品に出演した工藤夕貴さんもかけつけ、ホラーの二大巨匠に花を添えた。「マスターズ・オブ・ホラー」という名称とは対照的に謙虚で穏やかだった二人。そんな彼らの描く真の恐怖の世界をのぞいてみませんか?

『マスターズ・オブ・ホラー』恐-1グランプリ
監督:トビー・フーパー、ダリオ・アルジェント、ジョン・カーペンター、ジョン・マクノートン、ドン・コスカレリ、ジョー・ダンテ、ジョン・ランディス、ラリー・コーエン、ウィリアム・マローン、ミック・ギャリス、ラッキー・マッキー、スチュアート・ゴードン、三池崇史
リリース:角川ヘラルド・ピクチャーズ
公開情報:今夏、TV・劇場・DVDにてリリース予定

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