『大いなる幻影』『血と骨』などで女優としても活躍する唯野未歩子が初の長編監督映画を完成させた。以前より矢口史靖監督らとともに自ら制作もしていた彼女だけに、そのデビューを期待していた人も多いだろう。主演はオセロの“黒”こと中島知子と公開作が相次ぐ西島秀俊。都内で開かれた試写会の前にキャスト・スタッフが勢揃いする最初で最後の舞台挨拶が行われた。
中島知子が演じるヒロインは三年間身籠もり続ける妊婦。妊娠27ヶ月と聞くとホラーなものを想像してしまいがちだが、本作は女性ならではの視点をいかした“大人のためのファンタジー”となっている。映画初出演にして主演を果たした中島が「(最初は)私でいいのかなと思いました」と明かすと、「ギャップの激しい人にやってもらいたかったんです」と唯野監督。
その夫でどこか父親になる準備のできていない男性に扮する西島秀俊は、唯野監督とは俳優として夫婦役を演じたこともある。「女優としての唯野監督は怪物で、次元の違うところで演技をしている人なので演出されるのはこわかった。一回限りの瞬間を大切につかまえようとしている人なので、俳優としてカメラの前に立つのは切羽詰まった状況なのだと再確認しました」。
女性監督に女性スタッフの多い現場はベテランの俳優陣にとっても新鮮だったようだ。「唯野さんと仕事できるのが嬉しかった。集中力と緊張感のある素敵な時間でした」(塩見三省)「監督は現場でもあの小さな声で演出するので普通と全然違いました。ソフトな演出に自然にのっかってやれました」(木内みどり)「三年かかって三人赤ちゃんができる映画だと思っていた。私は早いうちに写真だけになってしまうんですけど…」(丹阿弥谷津子)
「現場では常に寝起きのテンションでした。セリフが標準語のみだったのですが、感情を表すのはやっぱり関西弁のほうが楽なので、表情で演技する部分が大きかったです。監督からは女を味わって下さい、と言われました。妊婦の経験談を木内(みどり)さんに聞いたり…私しかできないことを今している、という幸せがあるというので、幸せなことを思い浮かべながら演じました」。
「中島さんは初対面の感じがしなかった。お互いよく寝てたんですけどあまり気を遣わず…普段はチャキチャキしているけれど映画ではおしとやかで慎ましいですよね。女性に妊娠してもらったことはありませんが、この映画で妊婦を見守る大変さと幸せを疑似体験しました。子ども欲しいですね(!)」。
初長編で原作・脚本・監督の三役をこなした唯野監督。そもそもこのアイディアは監督の「人間の赤ちゃんも(動物のように)立って生まれてきたらいいな」というところからうまれた。「これは子どもが生まれるまでの幸せのプラン、心の準備、充実した期間の物語です」。制作上での苦労は特になかったというがこの日は緊張しすぎて髪が異常にのびる夢を見たそうだ。
三年もお腹の中にいた子どもはどのように産まれるのか? そこには映画ならではの嬉しいサプライズが用意されている。子どもを産んだことがある人も、これから産もうとしている人も、その第一歩として背中を押してくれるような心温まる小品だ。
『三年身籠もる』
監督:唯野未歩子
出演:中島知子、西島秀俊、奥田恵梨華ほか
配給:ゼアリズエンタープライズ
劇場情報:1月28日より新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開