全てを知り尽くした人と何も知らない人だったら、どちらが魅力的だろうか──? そんな命題に挑んだのはイギリスの文豪オスカー・ワイルド。彼の戯曲「ウィンダミア卿夫人の扇」が、誕生から1世紀以上を経て映画としてよみがえった。華やかでありながら脆い女性の繊細さを表現することに成功したマイク・バーカー監督に話をうかがった。
なんといっても見どころはヘレン・ハント対スカーレット・ヨハンソンの女優対決。ネタばれになるのでここではあまり言えないが、2人の関係が本作の肝となっている。そんな2人の女優を監督はこう分析する。「2人のタイプは全く違うからね。撮影時ヘレンは第一児を身ごもっていたんだけど、スカーレットは母親よりお目つけ役が必要なタイプだった。実際、2人が現場で顔を合わせたのはほんの3、4日のことだったんだ」。
脚本に惚れこんだヘレン・ハントはかなり初期の段階からこの映画に深く関わっていた。「ヘレンとは事前に十分話し合っていたので、撮影中はあまり言うことはなかったよ。逆にスカーレットは即興的な役者だった。たとえば、ベッドの上で足をバタバタさせるのはスカーレットのアイディアなんだ。あのシーンはあまりセクシャルではなくシンプルにナイーブにしたかった。なによりスカーレットを美しく撮りたかったんだ」。
原作はロンドンの密室劇だったが、映画ではイタリアのリゾート地、アマルフィに舞台を移し、よりスケールの大きな物語となっている。このアマルフィの美しい風景を贅沢に使ったロケーションや、キーアイテムである扇などの小道具も見逃せない。「今回の撮影はとてもシンプルにやったつもりだよ。美しい風景と素晴らしい役者をメインにしたかったから、いつもよりはカメラを動かさなかったんだ」。
男性とは思えない細やかな女性の描写が見事だが、男性の視点から女性を描くにあたってはどのような注意をしたのだろうか。「女性のキャラクターのほうが感情を素直に表現できると思ったんだ。原作者のオスカー・ワイルドは実は同性愛者だったと言われているが、19世紀当時は法律的に不法なことだった。だから女性のキャラクターを使って自分の思いを語ったんじゃないかと思う」。
そんなオスカー・ワイルドの魅力とは何だろうか。「人は皆、短絡的に物事を決めつけすぎてしまう。そして一度うえつけられた先入観はなかなかとり除けない。解決するには互いに正直に本音を言うしかないんだ。それはワイルドが作家として、セレブとして、ゲイとしてつき合わなければならなかった課題で、現代にも通じるテーマだと思う」。
ラストにはとっておきのサービスカットがついている。「あれはもともとはなかったんだけど、どうしてもある人物のその後を描きたくて。でも既に予算をオーバーしていたので撮影自体が秘密裏に行われたんだ」
最後に監督にとって理想の女とは…?「(もちろん)妻です。料理がうまく、笑わせてくれて、何よりいつも私のことを最高だと思ってくれる人がいいな」。映画を観る喜びを純粋に味わわせてくれる本作は観客に至福のひとときを与えてくれるに違いない。
『理想の女(ひと)』
監督:マイク・バーカー
出演:スカーレット・ヨハンソン、ヘレン・ハントほか
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
劇場情報:9月10日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
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