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October 30, 2004

delovely_1.jpg10月29日、第17回東京国際映画祭の特別招待作品『五線譜のラブレター』の主演ケヴィン・クラインが待望の初来日をはたした。本作は「夜も昼も」「ビギン・ザ・ビギン」など、数々の名曲を世に残した伝説の作曲家コール・ポーターの半生を、夫婦愛にスポットをあてながら描いたラブ・ストーリー。アカデミー賞受賞の名優だけではなくブロードウェイでも活躍するクラインは、ポーター役として演技、歌、ダンス、と大いに才能を披露している。

本作ではドラマチックな作曲家を演じる彼だか、『イン&アウト』などのコメディ役もこなす彼は「まだホテルから出られていませんが、とても素敵な国だと思います」と挨拶から笑いをとっていた。彼のユーモアのセンス、紳士的なゆったりとした語り口に会場は終始なごやかな雰囲気に包まれ、「癒し」の会見となった。

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前述の通り、ミュージカルにも出演しているクラインは、俳優になる前は音楽を志していたそうで、「歌う俳優」と自らを称するように、この役はまさに適役。とはいえ作曲家であるコール・ポーターを演じる上ではピアノが不可欠であり、練習は数ヶ月行ったそうだ。ポーターの曲でいちばん好きなものは? と聞かれると、“All Of You”を歌いながら答えてくれた。

さらに共演者のアシュレイ・ジャッドについても、全くベッドシーンのないの映画であることから「僕は性的にとても魅力的なので、アシュレイは困っただろうな」とここでもクライン節は炸裂していた。

クラインの名演だけでも十分見ごたえあるが、数々の大物ミュージシャンの登場も話題を呼んでいる。クラインがこの日絶賛したナタリーコールやアラニス・モリセットをはじめとして、ポップスターのロビー・ウィリムズからエルヴィス・コステロまで、新旧のミュージシャンたちがそれぞれのスタイルでポーターの曲を歌い上げている。特に見慣れたグランジとはうってかわってフリルのワンピースで登場するアラニスは見逃せない。ついでに衣装に関していえば、なんとあのジョルジオ・アルマーニも制作に関わっているそうで驚きである。

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同監督作品『海辺の家』を含め、近年シリアスな役が多いが、「歳をとったからコメディに出演しなくなったわけではない。これからもコメディに出演するし、いろいろな役を演じたい」と語った。事実、次作『ピンクパンサー』ではスティーブ・マーティンの相手役が決まっているとのことなので、今後はシリアス、コメディ両方のクラインを楽しみにしたい。

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October 22, 2004

銀髪&不精髭でファンの意表をついた『コラテラル』のトム・クルーズ。それもそのはず、10月のシネマカフェ[FEATURE]でも特集している本作でトムは初の悪役に挑戦しているのだ。首都圏が台風で荒れた10月21日、残念ながら仕事のスケジュールでひと足先に帰国したトムの分までマイケル・マン監督が自作の魅力についてたっぷりと語ってくれた。

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::鋭い目が印象的な監督。眠いわけではありません(多分)。

今回が4度目の来日となるマイケル・マン監督は、普段とは逆に撮られる側になって少々とまどい気味の様子。しかし質疑応答が始まるとひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれた。

見どころはなんといっても「もっとも危険なトム・クルーズ」だが、初の悪役を演じるにあたってトム・クルーズは当初は躊躇を示していた。それをマン監督が電話で説得し、今回のコラボレーションが実現したのだ。トムが演じたビンセントというキャラクターは確かに冷酷非道な殺し屋である。しかし「そこに至るまでにどんな経緯があったのかをきちんと説明することによって最終的にはトムも納得してくれた」という。

『コラテラル』はたった一晩の物語だ。監督はその「夜」を活き活きとした生き物のように描くために特別のビデオカメラを開発して撮影に挑んだ。「ビデオカメラを使うことによってより詩的な絵画のような映像を撮れた。ビデオでなければこの映像は撮れなかった」との発言からは映像に対する監督のこだわりがうかがえる。ちなみに監督が日本に到着した夜は折りしも台風の真っ最中。東京の夜景については「それはそれは素晴らしかった」と笑いを誘った。

今回は「10時間」という短い時間を描いているため、登場人物たちの衣裳も限られてくる。監督が「この一着にすべてをかけた」というトム・クルーズが着ている渋いグレーのスーツは香港製の特注品だそうだ。この衣裳を決めるにあたっては「(トムが演じる)ビンセントという役柄のバックグラウンドを細かく設定し、その人生を生きる人間がどんなスーツを着、どんな靴を履き、どんなヘアスタイルをするかを考えていった」というだけあって、服だけでなくちょっとした表情や仕種にもその役が背負ってきた人生が垣間見られる。mann_8.jpg
::ちなみにこの日の監督の
ファッションはこんなのでした…

『ヒート』に続いてLAを舞台にした本作だが、実はLAで映画を撮るのはあまり楽ではなく、中でも一番大変だったのは高速道路を封鎖することだったという。また、ジェイミー・フォックスが運転するタクシーの前をコヨーテが横切るシーンは物語のアクセントになっているが、さすがのマン監督も動物には苦労したようだ。監督いわく「コヨーテは調教できないので難しい。ほんの一瞬のシーンなのに撮り終えるまでには3ヶ月もかかった。3ヶ月間ずっとそのシーンだけを撮っていたわけではないけどね(笑)」

『コラテラル』というタイトルには“意図せぬ巻き添え”という意味があるがマン監督自身は映画のタイトルをつけるのがあまり上手くないという。自作の中では『ラスト・オブ・モヒカン』が一番気に入っているそうだ。

ところで本作ではアカデミー賞の呼び声も高いトム・クルーズだが監督の予想はというと…。「まずトムが主演男優賞にノミネートされるだろう。それから相手役のジェイミー・フォックスは『コラテラル』で助演男優賞、『Ray』(2005年公開予定)では主演男優賞の候補にも上がるだろうね。その他にはガエル・ガルシア・ベルナル(『モーターサイクル・ダイアリーズ』)、ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオも入ってくると思うね」。誰が獲ってもおかしくないだけに結果が楽しみだ。

「私は俳優を尊敬している。自分は役になりきることはできないが、彼らは私の代わりにそれをやってくれる。互いに尊敬し合っているからこそいいものが作れるんだ」との言葉通り、一作ごとに前作をしのぐ作品を作りつづけているマイケル・マン監督。どちらかというと男性ファンの多いマイケル・マン作品だが、男たちの信頼関係が生んだ濃厚な人間ドラマは女性にとっても男の本音を知る上でいい参考になりそうだ。次のデートの予定が決まっていないカップルは『コラテラル』を試してみては?

mann_7.jpg::目線に迷う監督もかわいい

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October 18, 2004

完成までに6年を費やした、崔洋一監督による渾身の力作『血と骨』がいよいよ11月6日に公開となる。自作以外では14年ぶりの主演をつとめるビートたけしと鈴木京香の夫婦役も話題の本作から、10月13日に行われた記者会見と舞台挨拶の模様をお届けしよう。

まず崔監督、ビートたけし、鈴木京香の3人が出席した記者会見では撮影の苦労話や本音に迫る質問が容赦なく浴びせられた。

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::血=崔監督、と=ビートたけし、骨=鈴木京香

−たけしさんと京香さんの夫婦については?

崔:たけしさんの金俊平はとにかく強くて凶暴ですし、京香さんも無理強いをさせられながらもだんだん母として女として強くなっていくという人生の変化を見事に演じきってくれました。こうして今まじまじと2人を見てみると、本当にこの2人が夫婦なのか!? とも思えてきますけど。

冒頭からいきなり登場する激しい濡れ場のシーンについて崔監督は「愛情だけではない2人の関係をそこで予告してしまっているような、そういうシーンになったと思いますね」と語る。 chitohone_kakomi_4.jpg
::これが問題の2ショット

−演じたたけしさんは(濡れ場のシーンは)いかがでしたか?

た:役者冥利に尽きるかなと思ったら、単なる肉体運動でした(笑)。

−冒頭のシーンからレイプに近い濡れ場があるということで、京香さん自身は出演することにためらいはなかったんですか?

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::映画では観られない京香さんの貴重な笑顔
京:原作をよく読んだらためらいそうなものなんですが、崔監督の元でたけしさんと共演できるのならば「やるしかないな」と思いました。

今回は“役者”として鍛えてもらうつもりで出演を引き受けたビートたけしは「とにかく監督に言われた通りの演技ができるように頑張ろうと思った」という。

−崔監督はなかなかOKを出さなかったのですか?

た:虐待に近いものはありましたね(笑)。

−肉体的よりも精神的にかなり大変だったところはあるんでしょうか?

た:身体は今はもう筋肉を落としちゃったけど、今より5キロぐらいはついてたと思いますよ。フィットネスクラブ行ってコーチつけて、一番重いやつを3ヶ月ぐらい毎日持ち上げてたんだけど、筋肉つけるためにプロテイン飲んだりしてたから、アテネ・オリンピック行ったら逮捕ですよ、ドーピング検査で。

−でもお腹はぽっこり膨らんでましたが?

た:腹筋は、やればやれるけどその時代にボディビルダーみたいに鍛えてる人なんていないでしょ? だから肉体労働をやっていてもお腹はぽっこりしてるの。それでお腹だけはやんなかった。

−そういう意味では、実在の人物に似せようと考えたのですか?

崔:うん、あのね、観てもらえばわかりますけどたけしさんの身体は色っぽいですよ。僕が一番たけしさんの身体を上から下まで見てますけど、色っぽいです。僕もびっくりしましたね。クラっときちゃうんですよ。何でと思うんだけど、ときどき肩から胸にかけての線がそそるんですよ。

た:淀川さんに見せたかったね(笑)。

−主演をなさるのはご自身がメガホンをとられているとき以来ですが、敢えてこの時期にそれを望まれたということは、たけしさんにとっても大きな収穫があったのでしょうか?
た:監督と主役を兼ねていると、自分が役者で出ていて面倒くさいときは監督として「ハイOK」って言っちゃうのね。それを何年も続けていると自分の役者としてのキャリアが丸っきりなくなってきちゃって、他人に言われたこともできなくなっているのに気づいて、この話は6年ぐらい前からあったんだけどもこの機会に役者として徹底的に鍛えてもらおうと。そうしないと次に撮る映画のときにまただらしない役者をやってしまうんで。そういう意味でもう一度リフレッシュしたいという気持ちはあったんですが、リフレッシュのつもりがひどい目に遭いました(笑)。

−役者さんの気持ちがこれでまた随分わかったのでは?

た:「役者冥利に尽きる」という意味がわかった。一発勝負のところとか、セットを壊すシーンなんかは、ここでNG出したらまた一から組み直さなければならないからものすごくテンションを上げていかなければならないし、尚且つ順序立てて殺陣師が言った通りに動かなければならないとか。それを土砂降りの雨の中で死にそうになってやってるんだけど、うまくできたときに「あーやっとできた」と思って、あ、これが役者冥利に尽きるってことなんだと。やり遂げた充実感がすごいわかった。

−原作にはなかった、少女が自殺した後の通夜の席でたけしさんが倒れていくというシーンで、本当にたけしさんがそのまま倒れてしまうんじゃないかというぐらいリアリティがあったんですけど。

た:原作の梁さんの話を聞いたら、あれは敢えて書いてないんだけど実話なんだって。あの日は一日大変だったんですよ。

−でもあの目線の先には妻の京香さんがいて、これまでにないホロっとした表情も見られるというか。

京:私はいつも憎い眼差しで睨んでばかりでしたから(笑)。

崔:たけしさんがやっぱりすがったんですよ、京香さんに。憎み合った夫婦でも死というものが圧倒的に目の前に現れたときにすがったのはファーストレディである英姫だったという、それがやっぱり人間関係の単純には割り切れないところなんじゃないかな。たけしさんの顔もよかったし、そこで「もうお前なんかとの縁は断ち切るぞ」という英姫の顔も好きなんですよね。

−京香さんは全編を通して、一人の女性として、役の妻としてこの夫婦関係と俊平という男性についてはいかがでしたか?

京:多くの女性は皆そうだと思うんですが、なぜ最後まで一緒にいるのかわからない。でも結局英姫にとって俊平を通して得た感情が自分を強くしていたわけで、俊平がいなかったら英姫の人生とは何だったのか…(英姫にとって俊平は)存在証明だったんだなと思いました。風変わりで難しいけれども本当に生き抜いた女性の面白い役を演らせてもらったなと思っています。

−社会にも時代にも取り残されて、あの中でしか生きられない人間たちがよく描かれていると思いますが、少しでも(夫である)俊平を愛しく思う瞬間はあったのでしょうか?

京:愛していたんだと思います。私たちにはわからないけれどやっぱりつながっていた2人なんだと思います。

−あの中で帝王のようになっていく俊平が本当に手に入れたかったものは何だったと思いますか?

た:家族の愛です(笑)。不器用だから暴力という形をとるだけであって本当は優しい男なんだと思います。家族の愛を求めているのにうまくできなくて愛人を囲ったり外で子供を作ったりしたのではないかと。結局は暴力に訴えてしまうけど実は悲しい人なんじゃないかと。だから“怪物”なんだろう。

−『クイ−ル』とは全く正反対の映画になってますけど?

崔:いま僕が色んなことをやりたがっているからでしょうね。『クイール』は『クイール』でよかったと思うし。『血と骨』では生々しい人間関係を描きたかった。そういう意味では長生きする映画だと思う。ワッと感動がきてワッと笑いがきてスッと消えていくようにはならない。確かに重い映画なんですが、僕の中に生まれた重さと軽みの2つが秩序なく混在している映画だと思います。僕は人間が大好きでどんな人間でも好きになれるけど、好きになった瞬間にどこかで憎しみを持つ、人間は業の深い生き物だと思います。でもたけしさんと京香さんに夫婦を演じてもらって一番いい時期にこの3人がクロスできたなという思いは強くあります。

−在日がテーマということで、韓流ブームに湧く今の日本でこの映画が上映されることについてはどう思いますか?

崔:感慨は全然ないです。今の韓流ブームはものすごい熱く波になっているけど、そこからは一歩外れたところで僕なりの世界観を提示しているわけであって、両方あってもいいと思う。ヨン様が好きな人みんなに「こっちにおいで」とは言いませんから(笑)、それぞれ共存していていいと思うし。ただ時代が変わっても『血と骨』は非常に長いスパンで観客の皆さんに受け容れられていくと思う。まあ負けるわけにはいかないでしょう!

『月はどっちに出ている』に続き在日韓国人を描いた本作は釜山映画祭でも注目を集め、崔監督は100人以上の女子校生にサインをせがまれたそうだ。特に若者が熱心に観てくれたことに「今の韓国映画を支えている観客の力を強く感じた」と言う。それについて、国際映画祭では先輩でもあるたけしは「日本映画とか韓国映画とか分けるのではなく、一本の映画として観ればいいんじゃないか」と世界を舞台に活躍する映画監督ならではの発言をした。

続く舞台挨拶では主要キャストが勢ぞろいし、この日集まったラッキーな観客に挨拶をした。この模様の詳細は公式ホームページでもご覧いただける。

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::舞台挨拶に駆けつけたキャストの皆さん

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::監督作以外では実に14年ぶりの主演となるビートたけし
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::ビートたけしの息子“武”役を演じたオダギリジョー
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::長い前髪で登場したのはオダギリジョーと腹違いの兄弟を演じた新井浩文
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::本作で体当たりの演技に挑戦した濱田マリ。公開前日には「あしたマニアーナ」でも「チトホネ!」と紹介してくれるのだろうか?
chitohone_butai_7.jpg::はかなさと強さの同居する独特の存在感が印象的なのは『イン・ザ・プール』等の公開作が控える中村優子
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::原作者の梁石日氏
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::詰め襟の黒服で現れた崔洋一監督

ビートたけし、鈴木京香を始めとして今の日本映画界を代表する最高の俳優たちが集結した『血と骨』は11月6日(土)より丸の内プラゼールほか全国にて公開となる。「人間は単純だが、単純の底にある複雑さを金俊平や英姫だけでなく自分の中にも感じられるような見方をしていただければ」という監督の期待に観客がどこまで応えられるのか楽しみだ。

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Oct 7, 2004 『約三十の嘘』完成披露舞台挨拶