8月12日、あるイギリス人監督が待望の初来日を果たした。映像美が印象的な『24アワー・パーティ・ピープル』や『ひかりのまち』で名を知らせ、『イン・ディス・ワールド』で世に衝撃を与えた若き監督。ティム・ロビンズ、サマンサ・モートン主演最新作『CODE46』でまたひとつ記憶に残る映画をつくりだしたマイケル・ウィンターボトム監督だ。
いままで観たことことのない、リアルな近未来の描き方、そして独特なオプラートにつつまれたようなやらわかな映像。観終わった直後よりも、次の日以降ジワジワと心に染み、その後何日も脳裏に居座り続けた。このような映画を撮る監督はどのような人か? 期待をふくらませながら、登場を待った。
現れたのはクリーンなルックスのやや小柄なウィンターボトム監督。インタビュー前に、「監督は話が長いので、あまり数多くの質問には答えられない」と事前に注意を受けてたのだが、監督は開口いちばん「今日のみなさんはラッキーだね。疲れているから質問の答えは長くならないと思うよ」と苦笑いした。やはりイギリスから初めての日本は遠かったのだろうか…。
今回の来日目的は『CODE46』のプロモーション。大物俳優の共演や、近未来という初挑戦ということなど、さまざまな注目を集めていた本作について次々と質問が飛んだ。
この映画で特筆すべきなのは、まずはSFであるということ。それも車が飛んだりする“いかにも未来”ではなく、文化が入り交ざったり、紫外線の害が破壊的に拡大するなど、すぐ手の届きそうな“近未来”であるということ。しかしみんなの予想に反し、初のSF作品ということに関しては「どうしてこういう物語になったのかは実際のところ、わからないんだ。ただ、発端はラブストーリーを撮りたい、そこのところにあった。誰しも人生に一度くらいは大恋愛をするものだろう? だからこそ、恋愛は感情移入しやすいテーマなんだ。悲しい結末ならなおのこと。大概の恋愛は別れで終わるものだからね。近未来を選んだのは物語を作る過程でのことだ。そうすることでより幻想的な世界観を描けると思ったからだ。夢のなかにいるようなね。」とクールに語った。確かに幻想的、というのは納得だ。
この近未来の舞台としては、ありがちなセットを築くのではなく、オールロケで行ったところにも彼の独特な世界観を感じることが出来る。世界で最も現代的な高層ビル群のカゲに第三世界の貧窮がうごめいている上海は、徹底した管理下のもと安全が保障される“内の世界”、そして高層ビルの真後ろに広大な砂漠が広がるドバイが無法地帯の“外の世界”のロケに使用された。監督はかねてからロケーションをとても重視し、前作『イン・ディス・ワールド』からイメージが出来上がっていたこれらのロケ地ありきで映画をつくりあげたという。
 | 同時に話題を呼んだのが名優ティム・ロビンスとサマンサ・モートンの共演。この絶妙なキャスティングについては「主人公2人の組み合わせはなんといっても大切だった。この2人なら恋に落ちても当然だろう、観 |
客がそう思えるような俳優たちだ。この2人なら遺伝子的につながっていても納得できる、そう思えるような俳優たちだ。その一方で、意外性も必要だった。2人が出会ったとして、だからといって簡単に恋に落ちはしないだろうってね。」と監督もその重要性を振り返った。
そして「結論をいうと、このキャスティングは本能的なものだった。ウィリアムはシステムを信じる調査員、いわば体制側の人間で、マリアは逆にフリースピリットの持ち主だ。キャスティングで一番重要なのはその俳優の資質を見出すことにあると思う。ティム・ロビンスもサマンサ・モートンも役柄の要素を既に備えていたんだよ」とつけくわえた言葉には、監督としての力量に関心するばかりであった。特に現場でのエピソードはないとのことだが、ティムについては「アメリカ人だけあって、上海での撮影はとても遠くに来た印象があったらしい。常にボディガードをつけてたよ。僕らはチャイニーズを食べてたけど、食事もケータリングで頼んでたしね。」という裏話もこぼしてくれた。
次回作はまたラブストーリーというウィンターボトム監督。また新たな境地を切り開き続けるとして期待される彼は、映画ツウならずともぜひおさえておきたい注目のひとりである。
『CODE46』
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:サマンサ・モートン、ティム・ロビンスほか
配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
シネセゾン渋谷ほか全国にて順次公開中