それは昨日の夜のこと。パラマウント劇場でキム・ギドクの新作『3-IRON』を見終えた私が外に出ると、そこには封鎖された道路にレッドカーペットが。念のために言うけど、私のためではない。その日パラマウントの近くでテレビ局取材のパーティーが開かれる予定だったのだ。時間は午後8時前。次の上映の10時まで時間のあった私は、体が小さいのをいいことに他人の股下をくぐってシュルシュルッと場所をキープ、すかさずカメラを構え周囲の人に聞きまくる。「来るのはニコラス・ケイジだ」とか「マーク・ウォルバーグが来るらしい」とか「オーランド・ブルームを待ってるの」とか言うファンの言葉に、俄然高まる期待感。このサイトを運営している会社の社長、通称“ハマちゃん”に「セレブログなんだから、セレブの写真撮ってきてくんないとさあ」とか言われそうな恐怖に震えていた私は、「どうよ」と言い返すチャンスをとうとう手にした、手にしてやった! と思っていたのだ…が。
待てど暮らせど、セレブはこない。いや、来たことは来ましたよ。「あの人はカナダの名優なのよ」とか「あれはカナダで有名なレポーター」とか、となりのカナダ人が教えてくれました。いえいえ国際的な人もいたの。カナダ出身の監督アトム・エゴヤンとかさ、ジェニファー・ジェイソン・リーとか、ネーヴ・キャンベルとか、TVドラマ「ロズウェル」でマイケル役やってた男の子とか……でもさ。あたしが欲しかったのはニコラスとかオーランドとかナオミ・ワッツとかショーン・ペンとかそーゆーピチピチな人なのよーっ。結局1本上映を飛ばして11時半まで粘った私に残されたのは、電池の死んだデジカメだけだった。ぐったり……。
::パーティーはこーんなリムジンだらけ。見物客の前を通るとき空だと大ブーイングが起こってオモロイ |
そんなわけで今日の決意は固い。映画という本道を通しつつも、町で劇場でセレブをキャッチすることを私は心に誓った。1本目の映画を見ると、映画祭本部のあるトロントのセレブエリア、フォーシーズンズへと足を踏み入れる。車寄せに鈴なりのおっかけと一緒にリムジンを覗き込み、フォーシーズンズに泊まってる日本人でーすみたいな顔してホテルに潜入し、いろんなところを嗅ぎまわったのである。でもさ、当然だけどセレブってなかなか会えないものね〜。あたしもいい年こいてアホよ、マジで。
だが絶対にニアミスできるチャンスが今日、1度だけある。それはロイ・トンプソン・ホールのガラだ。毎日ガラ上映のみが行われるこの劇場は、マスコミ用が写真を撮るために短いレッドカーペットがある。今日の上映は『House of Flying Dagger』。そう『ラバーズ』のチャン・ツイィーだ。この間来たばっかり、インタビューしたばっかりじゃんか…と思いつつも、昨夜と同じく人々の股下を抜けてポジション確保。そしてお姫様の登場に劇場前は興奮のルツボとなっていったのだ。撮るわよ撮るわよ撮ってやるうううとカメラを構える私、その前に立ちふさがるTV局の巨大カメラ。世界は突如スローモーションになり、その中で私は日本語で叫ぶ。どきなーっそこのカメラマン…! するとカメラとカメラにすっと狭間が。隣りに立ってたインド人のおばチャンが「今がチャンスよ! 撮るのよ! 撮りなさい!」と叫び、私がシャッターを必死で押すと、そこにいるのはハゲ頭のチャン・イーモウ、違うこいつじゃないっ! そこに遠くから聞こえるツィイ〜という嬌声、パンした私の視界にお姫様がっ! 動かないで動かないでチャン・ツイィー、夜は高感度モードだからシャッタースピードが遅いの、動いたらブレるのーっ……!

::チャン・ツイィー、動いちゃダメって言ったのにぃぃぃぃ…
……とまあこんな具合に撮った写真がコレである。そりゃもっといい写真が撮りたかったさ。でも“おっかけ”としちゃあ「マル高」なアタシが、もみくちゃになって撮った写真なの。この傷心を癒してくれた作品は、翌日午前中に見た私のラスト・ムービー「Le Choristes」。ありがとう、ジャック・ペラン。このご恩は忘れません。
::英語が得意じゃないから一言だけ…とか言って、5分はしゃべったジャック・ペラン(左)。右は『Le choristes』の監督クリストフ・バラティエ |
そしてむせび泣きの“アツミシホ的トロント映画祭”が終わったのである。次は来月、釜山でお会いしましょう。