パルムドールはケン・ローチ監督の「大麦の揺らす風(仮題)」、グランプリ(審査員特別賞)は「フランダース」に決まった。僕が以前、最有力候補と書いたアルモドバルの「ウ゛ォルベール」は主演女優賞と審査委員特別賞に終わった。
カンヌ映画祭も終わりを迎え、この1ヶ月ブログも終わろうとしている。
残り3日間は、旅の総括をしていければと思う。
旅で人と出会うように、映画祭というのは映画に出会うタイミングというのが何より面白いというのを今回、感じた。
例えば、カフェでコーヒーを飲んでいなかったら、この映画には行かなかっただろう。
クィックシルバーのTシャツを着た女性達から、このフライヤーを渡されなかったら、僕は、この映画に行かなかっただろう。
僕がバイヤーのパスをぶらさげていたからなのか?僕が暇そうに見えたからなのか?はわからないか彼女達は、僕のところにやってきて、フライヤーをテーブルに置きながら、微笑んだ。
そして、彼女は英語で僕に映画の説明をしたがっていたのだが、僕が英語を話せないことを伝えると残念そうに席に戻って行った。
僕はフライヤーをじっと見つめた。
フライヤーから読み取れるのは、
1:ライジングサンというタイトルの映画だということ。
2:ドキュメンタリーだということ。
3:スケボーの話だということ。
4:デニス・ホッパーがナレーションをしているということ。
5:クィックシルバーの製作だということ。
僕はグレイホテルの中の小さな試写室に向かった。
平坦な場所でも、スケートボードに乗れない僕にとって、ハーフパイプのような場所(言い方があっているのかどうかは不明だが…)で滑ること自体が信じられないのだが、それに加えて飛び技がスクリーンに映し出されていく。
どうやら1980年代頃の映像であることがわかってくる。
その中に日系人クリスチャン ホソイなるプロのスケートボーダーが居た。
全米を中心に活躍し、常にトップ争いを演じていることがわかり、会場も「HOSOI」一色の映像が出てくる。
どこか80年代、阪神タイガースで赤いリストバンドをしてバッターボックスに立っていた新庄選手と「モニカ」を歌いながら、「ザ・ベストテン」でプールの中にバク転で飛び込んでいた頃の吉川晃司を思い出させてくれる風貌の日系人である。
しかし、成功を手に入れた彼は、ドラッグに走っていく。
そして刑務所入りし、立ち直っていくドキュメンタリーである。
英語がわからないイシコなので、どこまで正確に説明できているかは怪しいが、インタビューが多い映像にもかかわらず、最後まで見入ってしまったのは、それだけ何かが伝わってくる映画だったに違いない。
必ずと言っていいほど、途中で席を立つ人が目立つ映画祭の試写室の中で最後まで誰も席を立たなかった。
最後、「キリスト」という名のHOSOIの技が映って、エンドロールが流れる。
ジャンプした際にスケートボードを片手に持ち、十字架を背負ったキリストのように手を広げて、ポーズを決めるこのシーンが、また様々なことを想像させてくれる。
終演後、会場を出たところにフライヤーをくれた彼女達と会った。
会話でのコミュニケーションはできなかったが、握手で来てよかったことを表現した。
そして、僕が日本人だったからこそ、彼女達はフライヤーを渡したかったことも知るのであった。
旅の人の出会いが映画との出会いにつながることが、映画祭に来ていると改めて感じる瞬間なのである。
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