
目の前が、こんな感じである。
さっきまで確実に手に持っていたはずである。
お前はどうしていつもこうなのだ。
いやいや、自分を責める前にもう一度、ゆっくり思い出してみよう。
空港に到着して、タクシーに25ユーロ払って、外に出たところまでは確実に覚えている。
そして、手に持っていて、リュックに入れるか入れないかを迷っていた。
あの時、入れておけば…。
いやいや、後悔するのは後にしよう。
そして、このマドリッドの空港の建築デザイン、あまりに美しいから写真を撮ろうと思ってカメラを取り出したんだよなぁ。
あの時だ!
ということは、あのあたりだ。
見当たらない。
ひょっとすると、浜田編集長がふざけて隠しているのかもしれない。
なくしたことを伝えてみよう。
「えっ?マジ?どこで?」
ごめん。少しでも彼を疑った僕自身を責めた。
「いくら入ってたの?」
警察が問いかけるように優しく聞いた。
確か日本円1万円とユーロで1万円程度。
それにクレジットカード3枚。
もう一度、二人でタクシーから降りて通ってきた道を通ってみた。
やはり、財布の姿はなかった。
3年程前の正月に購入した吉田カバンの福袋に入っていた財布である。
そうである。
僕は、肝心のカンヌ映画祭に行く前に財布を落としたのである。
浜田編集長が落とし物を管理している場所を聞いて、1階の管理センターに行く。
ボーイスカウトのような制服を来た女性が空港の全部のカウンターに電話を入れて探してくれるが、やはり見つからなかった。
ニース行きの飛行機の出発時間も迫っている。
ふと5年程前にミラノで、やはり財布を落とした時を思い出した。
あのときは一人旅だった。
偶然、その前に使ったアメックスのカードを1枚だけポケットに入れていた。
残りの旅はそのカード1枚でヴェネチアを周り、ローマに戻ったのを覚えている。
出発時間のタイムリミットである。
今回のカンヌ映画祭は、浜田編集長にお金を全て借りることになるだろう。
http://blog.cinemacafe.net/cgi-bin/mt/mt-trackback-cc.cgi/3967
