
| December 13, 2005 |
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| 言葉の香り |
::ライトアップに浮かぶ凱旋門
シャンゼリゼのイルミネーションが点灯し、街中がクリスマスのデコレーションに包まれるパリでは、人々がプレゼント探しに精を出す。クリスマスといえば、親戚を含め家族でゆっくりと過ごすもの。牡蠣やらフォアグラやらのご馳走をゆっくり味わいながら、プレゼントを贈りあうのが一般的な過ごし方。
そんなクリスマスプレゼントを集め、有名メゾンが一堂に会する「LE MARCHE DE NOEL」が先日ホテルムーリスで開催されていた。ホテルの入り口を入ると様々なクリスマスツリーが並んでおり、それぞれに作ったフルーリストの名前が書いてある。まるでパリのフルーリストのクリスマスツリーコンクール。一度にこれだけ有名フルーリストの個性豊かな作品が見られる機会は他にない。なんとも粋な企画に早速胸を躍らせながら、奥に進む。
マルシェの会場はホテルの2階のフロアがすべて使われており、各メゾンが客室をひとつずつ使い各々の商品を思い思いにディスプレイ。ディオール、サンローラン、バカラ等々の有名メゾンの部屋を見て回る。
最後に訪れた部屋で今までと違うトーンで出迎えを受けた。「ボンジュ〜ル! ムッシュシュンゲツ〜!」そんなおどけた様子で挨拶をしてくれた2人。このエマニュエルとクリストフこそ今パリでも話題のフルーリスト、オドラントである。 彼らは今回ロビーにツリーも飾りながら、マルシェにも出店している。鳥の剥製を使った黒いツリーの美しさもさることながら、彼らの部屋のディスプレイもサンジェルマンのお店と同様に黒く統一されており、店名どおり花の香りが充満している彼らのセンスの光る空間。彼らの人柄もあるのだろうが、オドラントの空間に入るとホッとする感覚がある。
実は今回は彼らの招待で私はここを訪れた。次々に入ってくるお客さんに対して、笑顔でオリジナルのアロマキャンドルの説明をするエマニュエルを見ながら、1年前の彼の言葉を思い出した。
右も左も分からない状態でフランスに乗り込んだ私のパリ生活は、「ボンジュール」も満足に言えぬまま4ヶ月が経っていた。見るものすべてが新鮮で、驚きと感動の毎日。しかし日本とは勝手の違うフランス式の物事に実は結構苦しんでいた。オランジュリー美術館だって先日オープンしたヴィトンの本店だって予定通りに改装が終わらない国なんだから、今考えるとそこで日本式に物事を進めようとしている私の方が宇宙人的な存在ではあったのだが、やりたいことは頭の中からあふれるほどあるくせに、考えすぎたり人の返事を待ったりで何もできない状態で、時間だけが過ぎていく。なんだかフランスの伝統やらパリの気高さやらに自分が跳ね返されているような感覚すら覚えていた。
そんな折、人の紹介でオドラントと知り合った。この出会いはいくつもの点がすべて線になったような奇妙な縁ではあったのだが、その事は別の機会に書くとして、とにかくそんな状態で彼らに会った。コレクションシーズンはメイクとして世界を飛び回るエマニュエルと人の善さがにじみ出るような笑顔を見せるクリストフのお店は、アンティークの品々や動物の剥製が並びその中に香りをテーマにした花々が飾られている。知り合ってしばらくしてから、自己紹介がてら自分の花の写真を片手にそんなお店を訪ねた。日本語であっても言葉での自己紹介が苦手な私はこの方法をよく使う。花は口ほどにモノを言う。しかし相手が花を扱う人であると、押し付けがましい紹介になってしまうこともあるのだが、とにかく彼らには自分の花を見せたかった。
常連の女優さんからの注文の大きなバラの花束を作り終わったエマニュエルが、興味深そうに写真を見始めた。「これは好き、これはあんまり趣味じゃない…」軽いつもりで見せた写真を1枚1枚丁寧に見ながら、驚くほど正直に自分の感想を述べ出した。私は戸惑いながらも何だか嬉しくなり、カタコトのフランス語で説明をする。それはもちろん技術的な話でなく感覚的な話。話も弾み、いつしか自分の頭の中にあるコトも話していた。「こういうことをやりたいんだよね。」「あんなことをやってみたいんだけどね。」そんな会話を繰り返していたとき、エマニュエルが突然写真から顔を上げ、こちらの目をしっかりと見て、言った。
「実現させること、とにかくやりたいことを形にすることが何よりも大事なんだ。」何だか唐突なタイミングでこちらの心を見透かしたようなその言葉を前に、私は衝撃を受けた。ごく当たり前の言葉なのかもしれないが、彼が口にするとなんだか重みが違った。メイクにおいても花においても世界の第一線で活躍している人間の言葉だからなのか。
この短いたった一言がそのときの私にとってどれだけ嬉しかったことか。
なんだかすべてがクリアーになった気がした。
その言葉に背中を押された私はそれ以降、以前にもまして花が好きになった気もするし、 花が楽しくなった気がする。フランスならではの問題は日々起こることに変わりはないが、その問題すらともすると楽しめるようになってしまった。このたった一言のおかげで。
感謝だけでは言い表せない気持ちが強くある。
接客が終わったエマニュエルにその気持ちを伝えたくなって、声をかける。「1年前に言ってくれた言葉、覚えてる?」「そんなコト言ったっけ? それより隣のメゾンの香水の匂い、ちょっときつすぎると思わない?」パリで出会えた大切な友人。
::旅行先のレストランにて。向かって左がエマニュエル。 この記事へのトラバはこちらへ!
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| 映画的ライフスタイル by 中村俊月 at 04:48 PM
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| November 23, 2005 |
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| 日々の中で |
冬の足音が聞こえ始めたパリはイベント目白押し。パリコレをはじめとするモードのイベントだけでなく、アートやその他のイベントも盛りだくさん。世界のギャラリーが集まる現代アートの見本市「FIAC」や、写真月間である11月のメインイベント「PARIS PHOTO」も開催された。
世界中のアーティストの作品を見ていると、各々様々なスタンスで創作をしていることがうかがえる。作り手と受け手との間には、長さが違うが距離がある。発表することを前提としているであろう作品なので、その両者間に作品があるのだと思う。
その作品があまりに作り手側にあると、受け手は作り手側の世界に歩み寄ることを強制させられるし、無理に受け手側に近い作品を作ると中身のないモノとして目に映る。フランスを象徴する2大要素、アートとモードはこういう点で共通する。もちろん作り手との相性もあるわけだが、この距離感の取り方が上手な作品には分野を問わず好感が持てる。
自分の花はどうなのだろう。
もつれた糸がだんだんと解けてきそうな予感がした。 この記事へのトラバはこちらへ!
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| 映画的ライフスタイル by 中村俊月 at 10:17 AM
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| November 16, 2005 |
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| 秋を添えて |
| 先日ビーズやボタンが趣味の知人とノルマンディーを訪れたときの話。
時期になってきた牡蠣を求めて観光がてら立ち寄った街で、土産物のシードル屋に並んで小さな骨董屋があった。ふらっと立ち寄ったその店で彼女は年代もののボタンを見つけて大興奮。実はこの店のオーナーもボタンマニアだったらしい。フランス語が話せない彼女に通訳を頼まれるものの、満足な通訳もできずにカタコトのフランス語で彼女がボタンマニアであることを説明しながら、ひとつひとつのボタンの説明を聞いていた。その内どこからか秘蔵コレクションの数々も出してきて、小さなボタンを前に2人は大興奮。そのころになると、もう言葉の問題はなくなっていた。日本語で話す彼女とそれにフランス語で答えるオーナー。私も初めて見るボタンのかわいらしさに心を奪われながらも、そんな2人の言葉の壁を越えた会話になんだか微笑んでしまう。
こういうことは私自身もこちらに来てから何度となく体験した。話をしても伝わらなくても、一度花を生ければなんだか分かり合える。花というものがコミュニケーションツールになりえることを知ったし、そのことに感謝した。
シネマカフェが8周年という記念すべき日を共に迎えられたこと、嬉しく思う。常に挑戦を続けるメディアとして、良質なコミュニケーションツールとしても発展していってくれることを願います。おめでとうございます! 花の代わりにフランスの秋を添えておきます。
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| 映画的ライフスタイル by 中村俊月 at 11:14 AM
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